第49話 ゴーレムからの提案
人型ゴーレムからの提案。
「我々の街に来てほしい」
その言葉にボク達4人は目を合わせ合う。
「ゴーレムに街なんてあるんだね」
あまりの強い興味に、ボクは一番に問いかけた。
「あぁ、もちろんだ。こちらからすると人族に街があることの方が信じられないが」
これはたしかに逆転の発想だ。
ダンジョンには一般的に人がいないはず。
ゴーレムからするとボク達の方が異質なのだろう。
"まじでこれ配信切った方がいいんじゃないですかー?"
"ゴーレムの街なんて配信したら、地上のハンターがこぞって行っちゃうんじゃない?"
"いやどれくらいの距離で着くのか分からないが、到着自体無理ゲーだぞw"
"秦、峰が仮に1級ハンターだとしてシルバーがそれ以上、レナちゃんの耐氷魔法同時に4人発動なんて難易度で言ったら1級ハンターレベルだろ? そもそも1級ハンター自体、全体を通して1割にも満たないんだから実質場所が分かってても行けない"
「その街は35階層にあるのか?」
「そうだ。1日も歩けば到着する」
秦と問いにはさらに予想外の答えが返ってきた。
「え、そんなに遠いの……。私、そんなに魔法もたないと思う」
玲奈が不安そうな物言いをする。
「難しい、か。だとしても我々には移動手段が他にない」
「街に着くまで、ところどころ休める場所はあるか? ゆっくりなら行けないいこともないが」
「要所要所には存在する。そうなると到着も二日以上はかかるだろう」
「二日、か。それでは間に合わんな」
秦が所要時間を聞いて、考え込む。
きっと彼は攻略に要する時間を気にしているのだろう。
少なくとも攻略に一週間はかけられない。
ボクが『ダンジョン1550』に向かうというタイムリミットがあるわけだけど、それだけではなくそんなに食料が持つのか、休みながら一週間もぶっ続けでダンションに滞在できるのか、などおそらく問題は山積み。
これはこの35層に来るまでの会議で挙がった問題の数々だ。
そもそもハンターにおけるダンジョンの平均連続滞在時間は三日と言われているらしい。
そして記録されている限りの最高記録は七日。
つまりそれだけ危険が高いとのこと。
ボクだけならどうにかなるかもしれない。
それに秦や峰も大丈夫だろう。
でもその大丈夫、というのは玲奈の耐氷魔法あってこそ。
玲奈自身、このような大規模な攻略は初めてだと言うし、一週間もダンジョンで過ごせるかってなると微妙なところ。
どうするべきか、こればかりはボクに判断できる話じゃない。
「まぁ転移結晶でいつでも帰れるわけやし、とりあえず行ってみたらええんとちゃう?」
「峰、お前はまた無責任な事を……ってそれは、そうだな。引き際の判断と効率の良い方法を常に模索しながら進んでいく。それでいいか?」
秦は方針が決まったことを内容と共に、ボク達三人に確認してきた。
「うん、耐氷魔法……この感じだと6時間くらいが限界だと思う。その都度休憩してもらえたら大丈夫だよ」
「はい。お嬢様、ご無理のないようお願いします」
「僕もそれでええよ〜」
「ボクも大丈……」
(リュウっ!)
秦に返事をする直前、ソルイから声がかかった。
今の状況を打破できる案と共に。
「リュウ、どうした?」
ボクが言葉を詰まらせたため、秦は不思議そうにボクを呼びかける。
「いや、ちょっと待ってね」
ソルイの言うとおり、ボクはガントレットを前に突き出した。
「従魔『アイスワイバーン』」
そう、共鳴である。
さっき吸い込んだ魂、氷のワイバーンについて、吸収した時に名が直接脳に伝えられたのだ。
コイツらの個体は『アイスワイバーン』。
ついさっき、ボクの従魔になったのである。
「な……っ! リュウ、何をした!?」
「リュウくん……っ!?」
「なんやそれ……?」
秦、玲奈、峰はそれぞれ驚きを隠せない、そんな様子だ。
それにゴーレム達も何事かと戦闘態勢に入っている。
"え"
"嘘だろ"
"今シルバーの手からモンスター出てきたよな"
"おい誰かこの配信止めろって"
"さすがにこれハンター協会が黙ってないんじゃない?"
"そりゃハンターが討伐対象のモンスター出せるってヤバいもんな"
「違うんだ! これはボクの共鳴で……」
と、ボクは今の状況を事細かに説明した。
もちろん詳細な説明はボクには難しいので、ソルイがところどころ付け加えてくれたけど。
「そうか、そのガントレットの共鳴だったか。にしてもモンスターの魂を吸収し、それを使役するなど聞いたこともない」
やっぱりこのソルイの力は特別らしい。
三人の反応を見れば一目瞭然。
間違いなくボクよりハンター経験があるみんなが驚愕していたのだからよほど珍しいのだろう。
「そっか。ソルイにはそんな力があったんだ」
「そうなんだ。この力のおかげで3級ハンター試験も突破できたしね」
「それはそうと、リュウくん。ごっつい力でびっくり仰天なのはいいんやけどさ……」
するといつも多弁な峰が言葉につかえている。
「峰、なんだい?」
「あの、今思ったんやけどこれ配信しとるよな?」
「あ……」
「あ……」
秦と玲奈は同時に気の抜けたような声を出す。
配信開始の時、コメントが大量に来るからと通知を切っていたから忘れていた。
今スマホの画面を見ると、大量のコメントが流れている。
その内容、あまりのコメント量で全てを見ることはできないけど、概ね驚きの声。
しかしその中にハンター協会が知ったらヤバいんじゃないか、シルバーが討伐の対象にならないかなど、事の重大さを考察し合っている様子もある。
目の前の三人もおそらくそう言った感情が渦巻いていることだろう。
「とりあえず」と玲奈が話し出したことで、視線は彼女へ集まる。
「一回配信、止めとこっか」
そう提案するのだった。
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