第2話 ボクが君を守る
あれ? ボクは変なことを言ったのか?
なんだか彼女、困った顔をしている……。
"え、あいつ何言ってんだ?"
"新手のナンパか"
"これきっと助けたら体を求めるやつだ。そんなやつに助けてもらうな"
"いや……でも彼が助けてくれないと……"
"そうだ、あのシルバー髪の男の子に頼るしかない"
"おい、シルバー! お前の感性は間違ってない! レナは可愛い女の子だ!"
"可愛いって言われてレナちゃん照れてる"
"そんな君も可愛い"
"シルバー、助けてくれ"
"頼むシルバー"
"シルバー! シルバー!"
「え……えっとシルバーさん?、助けてくださいっ!」
彼女はボクの手を握り、見つめてきている。
相当危ない場面だったのか彼女のその手は汗で滲み、少しばかり震えていた。
それにしてもこんな近距離で女性という生き物を初めてまじまじと見た。
実際、父さんが見てたマンガ?やえろ本っていう紙に載っていた女の子しか見たことがないのだ。
この子はそれと同様……いやそれ以上に端整な顔立ちをしており、ボクたち男にはない華奢な割に起伏のあるボディラインが女性としての魅力を掻き立てる。
さらにはボクの銀髪と違った艶のある短めの黒髪が彼女の顔の小ささや可愛さを引き立たせているように感じた。
父親から淡々と女の子という生き物の素晴らしさを指導されたボクからしても、『可愛い』とは彼女のために作られた言葉なんじゃないかと思ってしまうほどだ。
こ、これが……可愛いってやつか……。
どんな武器よりも凶器だね。
父さんが守れって言った意味が分かったよ。
ボクは気合いを入れ直し、
「わかった。君を守る。父の言葉に従って『女の子は守れ! 可愛いなら尚更な!』」
再びボクは地面を強く蹴り込み、敵へ高速で向かっていく。
今度は相当強く踏んだのか、地面がめり込む感覚がした。
相手の目の前まできたが、ボクの動きが見えてないみたい。
なので、すかさず上に拳を振り抜くと相手の顎に命中。
「グハッ!」
大きく宙を舞っている。
"今シルバーの動き見えたやつ"
"いないだろ"
"気づけば男がぶっ飛んでました"
"合成とかCGじゃ……"
"いや、リアルタイム発信でそんなことできるかwww"
"てかぶっ飛ばす前にあいつなんか言ってたぞwww"
"父の言葉に従って"
"女の子は守れ"
"可愛いなら尚更な"
"ちゃんと覚えてるの草"
"ファザコンの女好きだ"
"↑シルバーにぶっ飛ばされるぞ"
「あとは1人だけだね」
「てめぇ、武器も持ってないハンターを倒したくらいでいい気になってんじゃねーぞ」
そう言って目の前の男は何かを取り出した。
そしてそれを上に向けて、
バンッ――
何かを放った。
と同時にものすごい音と、何かが焦げた臭いがここまで漂ってくる。
"おい、あれアサルトライフルじゃね?"
"しかもダンジョン945の中層ボス『麒麟』から作られたなんとかって銃"
"幻雷銃。別名【 麒麟の叫び 】"
"武器持ちのハンターを素手でなんてさすがに無謀……"
"それに最新の階層に来ているってことは最前線のハンターなんじゃ……"
"シルバーやばいじゃん"
「シルバーさん、逃げてくださいっ!」
"レナちゃん、自分よりシルバーの心配"
"健気で可愛い"
"いやいや、レナちゃんも逃げなって"
あの可愛い女の子が逃げてって言っている。
逃げる? あの程度ならワイバーンの足元にも及ばないだろうに。
「可愛い女の子さん、すぐ終わるから待っててね 」
「この幻雷銃を見ても強がれるなんてよっぽどのバカなんだろうなぁ!! 」
そう言って、あいつはその幻雷銃ってやつを向けてきた。
玉を飛ばす武器か、たしか60層付近にも似たようなものを使うモンスターがいたな。
さすがにこの肉体ではマズイかもしれない。
「硬化!」
ボクの体は再び竜の鱗に覆われていく。
"何あれ……?"
"知らない"
"体全身が何かに覆われてるのか?"
"か、かっけぇ……"
「なんだそれ……気色悪りぃが関係ねぇな。【 幻雷龍の咆哮 】」
男がそう叫ぶと、あの鉄の塊から雷を帯びたエネルギーが放たれた。
バチンッ――
その雷はボクの体を貫くと同時にこの周辺一帯に影響を与えた。
うん、やっぱり硬化してると全く問題ないね。
シュウウ――
なんだかさっきまで飛んでた飛行物体は雷の影響で下へ墜落したみたいだ。
"あれ!? カメラ映らないんだけど!? 俺だけだったり?"
"いや、わいも"
"バグか!?"
"いや、幻雷銃の雷の影響でAIドローンがやられたのかと……"
"おいふざけんじゃねー! レナは!?"
"レナちゃん……"
"シルバー……"
さっきの攻撃女の子にまでは届いてないみたい。
今のはたまたま当たらなかっただけ、多分危なかった。
守るって難しいね、父さん。
「くっそ、なんであいつには効かないんだ!! ならせめてあの女だけでもっ! 【 幻雷龍の咆哮 】」
また同じ技。
次は女の子に向かってかっ!
「キャ――――ッ!」
彼女に直撃する瞬間、
「ふう……。なんとか間に合ったね」
ボクは彼女を抱えることができた。
抱えた手には背中と膝裏の感覚がほんのりと温かく伝わってくる。
あの飛び道具人間には危なすぎるよ……ボクも人間だけどさ。
「あれ……私、生きてる?」
「うん、生きてるよ。守るって言ったでしょ?」
「ひゃ……シルバーさん、顔が近い……」
そんなことを言って彼女はまた顔を赤らめている。
近くで見るとより一層可愛い……。
「顔が近いとダメなの?」
「い……いえ、そんなことは……ないです、けど」
「じゃあその可愛い顔をもっと見ていいんだねっ!」
ボクがさらに顔を近づけると、
「そ、それはダメですぅっ!!」
彼女の手によって押し返された。
良いって言ったりダメって言ったり、人間って難しいな。
「おい、銀髪! 龍王会なめてんだろ? ダラダラ女と話しやがって」
男はもう一つ幻雷銃とやらに似てる形状のものを取り出した。
おそらくあれからも飛び道具が出るのだろう。
「ひっ……銃が2つ……!?」
「大丈夫だよ、可愛い女の子さん。ボクにはまだ手があるんだっ!」
そう、彼女を守りつつあの男と戦う手段が。
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