第13話 国王対双剣
少し肌寒くも感じる夜の城下街。その更に暗い路地裏でルインは立っている。王城を見つめて…
→クレネSide
「「………」」
黙って互いを見合う国王アールドとクレネ。互いに見合ってはいるがクレネには確かな殺意が目に込められていた。そしてアールドの両隣には王妃アルティエナと宰相グルニスが立っている。そして
「グライス…貴様だな。アメリをあそこまで辱めた張本人は…。」
アールドの座る玉座の真下にはグライスと騎士団長ネイフィアが立っている。
「あぁ、地下牢を見たのか。私の壊れた玩具はどうだった?」
「虫唾が走った。今直ぐにでもこの場の人間を皆殺しにしてやりたい気分だ。」
「やってみるか?」
そうして国の末路を辿る戦いの幕が開けた。最初に仕掛けたのはクレネだった。天眼拘帝を即座に発動し四方八方から無数の鎖がグライスを襲う。しかし…
「無駄だ。お前も知っているだろう。私の能力を。」
「…」
グライスの血族は皆、同じ能力を得る。そして彼の一族を無敵たらしめる彼らの代名詞的な能力。それは…
「嵐業…」
「そうだ。如何なる攻撃も等しく無力。眼前の一切は塵と化し、我等が主の道を阻む者は終わりを迎える。」
「…うるせーよ。」
「ん?な!?」
「その汚ねぇ〜口閉じろよ。そよ風野郎。」
今その瞬間にグライスは気がついた。自身の身体が動かないことに…。クレネの能力はお世辞にも攻撃向きとは言えない。しかしクレネにはアテリアルの中枢を担える程のそれがあった。
「魔法か!!」
「…天眼は不可視にしても風の動きで悟られる。だが魔法は魔力の流れを察知するしかない。そして俺の能力は拘束と監視が主だ。…想像できねーよな。そんな能力者本人が能力を魔法で再現するなんてなぁ!?」
「ふっ、確かに一本取られた。だが貴様はもう一つ忘れていることがあるぞ。」
そういった次の瞬間にはクレネの身体は強い衝撃により後方へと飛ばされる。
「かはっ!?」
「我らにはerba armi《四大武神》がついている!!」
四大武神。それは世界にある四つの基本武器を能力の主軸として戦う戦士の呼称。その四人の内の一角がネイフィアである。
「槍の武神…jilbsu《瞬撃の仙鬼》。」
「槍の王ネイフィア殿は我が国唯一の異名持ち…しかしその一人の身で王国を守ってきたのだ。当然そこらのゴミクズなど容易に潰せる。」
「そこにお前の薄っぺらい援護か…。一つ教えろ。どーやってそこの鬼を操った。そこの猿山の大将の能力でも武神の力を我が物にできるとは考えにくい…。それ程までに強力無比故に神に最も近しい者の称号を得ているのが武神だ。ましてやそいつは人一倍精神力があった筈だが?」
「…王妃様と宰相様は能力は無いが魔法に長けていてる。それも精神系のな。だが流石は武神の名を冠す者…、肉体は制圧できても精神が不可能だった。が故に…、精神を外傷により破壊した。最初は貴族や浮浪者の玩具として辱め、騎士として大切な腕や脚の神経の破壊、そして声が出なくなるまで遊び、目が枯れるまで泣き叫ばせ壊れきった肉体へと変化させた。最初から最後まで楽しませてもらった。特に既に壊れた目をこちらに向け手脚を壊す寸前に血の涙を流しながら助けを縋って来た時は最高の愉悦が得られた。なんと口にしたと思う?何でもするから貴族や浮浪者の相手でも能力の行使もなんでもするからもうこれ以上はやめて…と、あの時の顔は最高であった。貴様の女も似たような事をしたのだがこれもまた愉快であった。奴は最初「…す」ん?」
「…ろす殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!崩して砕いて潰して焼いて斬って貼り付けてぇえぇえ!!壊してやる…。」
「…なんだ貴様…壊れたか。」
最初はアメリの仇を取ろうと思ってた。それが彼女や彼女の愛したこの国への最高の手向けとなると…気が付いていた。彼女の気持ちも俺自身の気持ちも…気付いていて尚蓋をした。国から守る為、に何かあった時にこんな俺でも光であれるように…傲慢だった。無意味だった。はたから見たら、いや、誰から見ても滑稽だっただろう。いい喜劇だ。…すまない…アメリ、俺は今自己満足の為に殺意に刈られている。復讐と言う言葉を使いながら俺は今何もできなかった俺に手向けとして…禁忌に手をかけようとしている。やっと気が付いた。お前のいない世界なんてもう…今は…今は!!
「堕ちろ!!!!」
壊してしまおう!
「その力が貴様にあるのか!?国を落とすだけの力が!!」
すまない…アメリ。天国(そっち)には行けそうにない。それでも俺を待っていてくれるか?
「…世界を壊す為なら俺はもうなんだってやってやる。来い!!壊すべきものは!消し去るべきものは!堕とすべきものは!!今、定めた!!!」
それは天の眼を持つ拘帝に許された王の証。元来のクレネの能力は天眼天輪。眼としても使える天輪を操る監視並びに暗殺に特化した能力。しかし彼は人を殺すことを良しとしていない。故に拘束に特化するように天眼天輪の移動速度を抑え殺傷能力をゼロにする縛りの代償に拘束能力を得ていた。しかしその縛りを解除し誓約を破ることで使えるもう一つの切り札を彼は持っていた。
「我を導け(堕とせ)!!!!アルガルダ!!!」
特定禁忌指定神話生物アルガルダ。かつて世界では誰でも知っている、神々に抗い数多くの神を屠ったイカれた集団がいた。その集団に所属し召喚事例のある現在も生きる原初の怪物。その一柱に属する悪魔。それがアルガルダ。そんな人智を越えた生物がにやりと不気味に微笑み言う。
「堕ちるところまで堕として(導いて)やる。暴れろ…愚道者よ。」
戦姫の凱旋 PCぶっ壊れ太郎 @888885
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