第11話 起承転結(転)

 能力、魔法、魔術、この3つの似ても似つかぬ力の表れたちにはそれぞれが世界中からそう呼ばれる理由がある。

 能力とは神が万人の中より特別な者へと与えし特別な力。その力は言うなれば一種の加護とされ魔力を使わずに発動することができる。

 魔法とは莫大な魔力を消費し何かを生み出す。邪神の使徒の力より生まれし奇跡の副産物。

 魔術とは何かとの契約或いは制約を設け破ることで命を犯す代償と引き換えに世界に干渉する諸刃の剣となる力。


「俺は魔法を知らない。、はっきりと言うが俺の使える力は権能と一部の術だけだ。この国で初めて魔法と呼ばれる事象を見た。あれは…なんとも酷い力だな。虫唾が走る。」

「ルインはそうやって言うけど普通に私達の生活にも役立ってるし言葉で表したものよりマシなものだよ。現にこの国に張られてる大結界も魔法によるものだし。この結界が無かったら今頃この国は亡国になってたと思う。」

「…そうだ。この結界は確かに使徒を近付けさせない…正確には使徒が嫌う特有の力を放つ効果がついている。それだけであれば問題は無かった。しかし残りの2つの効果が問題だ。」

「2つ?他にも付いてるの?」

「…1つ、生命力を吸い取る効果。」

「え!?それって…」

「あぁ、結界内の全ての物はこの効果の影響で寿命が短くなっている。」

「…じゃー国の中の人はみんな…」

「あぁ、生きれても40歳までだろうな。」

「…それは変だよ。だってお父様はもう70歳だもん。」

「それが最後の効果、奪われた生命力は巡り巡って一部の者へと与えられる。そして生命力を与えられた者は強く永く生き続ける。そして街を見る限り奪われてないものもいた。例えばアテリアルや兵士達、魔導士…そしてお前だ。」

「え?」

「そして今名前をあげた者たちの共通点わかるか?国を主として属す者たちのみが生命力を吸われない。つまり…」

「…このネックレス。」 

「そう言うことだ。」

 ソフィアは首にかけていたネックレスを訝しげに見る。薄くとても綺麗で透明な菱形の青い石が埋め込まれた今まで美しく見えていたそのペンダントは全てを知ったソフィアには不気味な物に見え始めた。


「あぁ、先に言っとくがそのペンダント…お前の言う能力も組み込まれている。」

「…お父様の、現国王 アールド・フォン・レグルシスの能力、絶対我世…」

「どんな能力なんだ?」

「指定した人の強化と相手への強制服従効果…そして無機物の操作…これが王族の証とされる継承系能力。」

「今のうちに外しておけいざと言うとき絶対服従させられるぞ。」

「…でも外したら生命力奪われるんでしょ?」

「お前生命を操る力の持ち主だろ…」

 ※本人は忘れていたが彼女は生命を操る権能の持ち主です。


「…そうだった。」

「さてこれで兵士達が俺達を血眼になって捕らえに来る理由も大方わかったな?」

「うん、家族が結界の人質に取られてるんだ。」

「あぁ、そう考えるとアテリアルの2人はかなり大胆な行動に出たな。」

「え?どういうこと?」

「アテリアルの2人は俺に国王が元凶であることを教えた。それだけでなく攻撃し敢えて不自然なく会話する状況を整えて来た。おまけに俺達が逃げやすいように攻撃時に起こりをわかりやすく発生していた。」

「起こり?」

「剣士や魔導士と行った戦闘を得意とする者達は攻撃時に気配がわかりやすく出る。それを起こりと言う。…あの実力なら最低限の起こりに留めて攻撃して来ることも可能だっただろうからな。」

「それもあるだろうけど多分一番はネイフィアちゃんのお陰だと思う!」

「ネイフィア?」

「うん!この国の騎士団長の女の子で私の友達なの!あの2人も立ち位置的には騎士団長の部下って立ち位置だから!」

「なるほどな…、そいつなら国情も粗方知ってそうだな。国情がわかれば結界を生成し部下にペンダントを持たせる理由もわかるかもしれねぇーな。」

 解決策が見えたのかルインは少しソフィアに笑って見せた。それを見たソフィアも少しつられて口角が上がる。


「…でも、どうして?ルインは力を持ってるから手元に置いときたいって魂胆はわかる。けど私は娘なんだから普通に帰っても…」

「多分だがその理由は…」



 →王城にて


 王の鎮座する広い部屋。その部屋の扉を後にルインを襲った二人がため息を吐く。

「「はぁ〜…」」

「疲れたねー…ほんとこの緊張感だけでも何とかしてくれないかなー…。」

「あぁ、気持ちはわかるがあまり口にするなよ。取られるぞ。」

「わかってるよ〜!」

 口を膨らませ不貞腐れるアメリを見てクレネは不覚にもかわいいとか思ってしまい、そしてそれを見て決心したのか隣りに居るアメリに声を掛ける


「…これが終わったらどこか遠くで一緒に暮らさないか?」

 その言葉を聞いたアメリは表情を明るくさせ満面の笑みでクレネを見る。


「うん!!一緒に行こう!!クレネくんが離れてって言っても絶対離れないからね!!絶対だからね!!」

 その返事を聞いてクレネは満更でもなさそうに笑ってみせた。

 ※尚、クレネ本人はこれがプロポーズとして充分に効力を発揮していることに気がついていない。

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