独り言

和音

私の夢


 今死んだとしても他の人よりも幸せである、と自信を持って言える。幼少期の頃から経済的な理由から行動を制限される事はなく、月数千円のお小遣いで金があふれるほど欲も少ない。足りないものはそこまでなく、満ち足りた人生。強いて言えば恋人がほしいと思わなくもないが、家族や友達によって大体の欲が満たされている。私の思い描く恋人とは、自分にとって都合のいい人であり、それが友人でも構わない。さらに都合の悪い状況も楽しめるくらいには心に余裕がある。つまり欲しいものがないのと同じようなものだ。


 ある教科を除く大まかな事は平均以上に出来ると自負しているし、そうなれるように努力をするのは好きだ。ただ、すべての分野において平均以上、というより上位でありたいだけで、一番になりたい欲は薄い。勉強は好きだけど、精神的に疲れるのは好きじゃない。運動は好きで、身体的に疲れるのは割と好きだ。


 人生において許せないことは多いほど、苦しくなると思う。もやもやした気持ちも寝れば消えてなくなる。寝れなくて悩むこともないし、ストレスの流し方もいくつかある。


 今一番の課題は、やりたいことを見つけることだ。漠然とやりたい事や、やりたくない事はあるがこれといった唯一の夢がない。大学生活を通して様々なことに挑戦したり、知らないことを経験することで夢を見つけようとしているが、今のところうまくいっていない。私はそれがとても怖い。


 そもそも、私の想定していた人生は学生までで、大人になる事を考えていない。私が読んできた物語の大半は学生時代のみ書かれており、大学ひいては社会人の自分が全くと言っていいほど想像できない。


 それに、私は過去に強い執着がある。小学生の時に思ったのが多分最初で、中学高校と上がるたびに強い思いが私を支配する。小学生の頃は、数日戻りたいと思う程度。高校生になる時には、学年が上がっていくのが憂鬱な程度。今では、これからの人生を生きるより子供のころからやり直したいと本気で願う程度に膨らんでいる。


 大人になった自分を想像できないというのは子供の発想だと言ってしまえばその通りだが、もっと強い何かが私を支配している気がしてならないのだ。この前、ふとその想いが強くよぎり、立っている事すら呼吸をする事すらしんどく、数分の間苦しんだ事がある。上記したように私は強い人間なので、その感情を抱えながら普通の人間として、未来ある若者として振舞えている。


 私は大学生が子供でいられる最後の場所だと思っている。子供でいる事に強い執着を持っている私にとっての、大人になる事に何の希望も持っていない私にとっての夢がこの続き独り言が数年後も数十年後も書かれる事である。

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