死神は女子高生。give me love.

猫野 尻尾

第1話:夜中に訪ねてきた女子高生。

俺は以前勤めていた会社を辞めて広告デザイン会社に就職したため

新しい土地へ引っ越してきた。

友人や知り合いのツテで一軒のアパートを紹介してもらった。


高いマンションなんかにはもったいなくて住めないからな。

仕事から帰って来たら寝るだけのために高額は出せないだろ?

ボロくても雨風さえ凌げたらそれでよかった。


俺が尋ねたそのアパートの名前は「恵比寿荘えびすそう

恵比寿荘は街中に建っていた。

街中に建っていたのは昔、映画館だったんだろうなって分かる風情の佇まい。

それを住居として改築したんだろう。


ここは基本独身しか賃貸は受け付けていないから女人禁制、男子禁制。

だから、女の子なんか連れ込んじゃダメみたいだ。

まあ、今のところ俺に女っ気はないから関係ないかな。


管理人さんのご説明によると、建物自体は二階建だが住居は一階だけで

二階は物置になってるんだそうだ。


部屋が全部で6部屋・・・入り口から見て左側が俺の部屋。

そして俺の部屋のすぐ横が女性で、その向こうが男性、その向こうの部屋に

売れないピン芸人さんが住んでいるらしい。


で俺の部屋の向かいが浪人生。

浪人生の横の部屋が、どこかの芸能事務所が借りてるんだそうで、芸能事務所

が借りてる部屋の横の部屋は今は空き部屋になってるんだそうだ。


恵比寿荘にはそんな住人たちが住んでいる。

とくに不満があったわけじゃないから俺は恵比寿に住むことに決めた。


そして恵比寿荘に引っ越して間もなくのことだった・・・夜中って言うか

もう朝方に近かったか。

俺は気持ちよく寝てなんだ・・・そしたら玄関のドアをドンドン叩くやつ

がいる。

俺が起きないでいたら、しつこく何度も叩きやがった。


「え〜いやめろ・・・ドアが壊れるよ・・・誰だよ、こんな夜中に」

「そんなにドンドン叩いたら隣や向かいに迷惑だろ?」


で、時計を見たら、4時2分56秒だった。


4256・・・死に頃?・・・って読めなくもない。


そのまま居留守を使おうと思った。

出ないと、ドアを壊されそうだったから、しぶしぶ起きてドアスコープを覗いたら

外に女子高生が立ってるじゃないか。

女子高生が訪ねて来てるのに、眠くても無視するわけにはいかないだろ。

しかも可愛いと来たらなおさらだ。


鼻の下が伸びたままドアを開けてあげた。


「こんな夜中になにか?」


「どうも、夜分すいません・・・こんにちんこ」


「ちんこ?」


「こちら井戸川 万平いとかわ まんぺいさんのお宅で間違い

でしょか?」


「間違いないでしょうか?・・・じゃないの?、日本語おかしいよ」

「で、万平は俺ですけど・・・なにか?」

「用事があるなら早くしてくれる?ここ女子の連れ込みは禁止なんだけど・・・」

「そんなところに立ってたら誰かに見つかるから、とにかく中に入って」


「では失礼しますぅ」


俺は周りを確かめて、その子を部屋に入れた。

部屋の中に入って来た女子高生は見るから、おぼこいし未成年っぽい。

今んところ17歳の俺より歳下に見える・・・。


ん〜記憶を辿っても憶えのない女の子。

行きつけのたこ焼き屋バイトの美幸ちゃんとも違う・・・うん、顔が

違うからね。

もしどこかで出会ってたらこんな可愛い子、俺が忘れる訳ないんだよね。


はて?・・・いくら考えても思い当たる節のない・・・。


「あの、なにかの集金?」


「集金と言えばそのようなもんかもぉ」


つづく。


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