第45話 近所の公園

幼少期の頃からいつもこの小さな公園を

使っていた。古くても楽しめたブランコ。何度も滑った滑り台。

体重の違いを感じたシーソー。大きくなればなるほど遊具は使わずに話すことばかり。

なんてことない出来事を話しては笑ったり、

泣いたり、慰め合ったり。

部活で忙しい中学になるまではずっと一緒だった。


高校生の今では少し背伸びしたいみたいに

大人な雰囲気でまるでお城のお姫様か

王子様になったみたいのお高台に登って

街の夜景を眺めてはカメラで景色を

楽しんでいると、夜空にはウソみたいに

雲が晴れていてキラキラと輝く星が瞬いていた。


「朔斗、私、最近、ここに来て無かったんだけさ、あの高いところってなんだろう。すごい光ってる。新しくできたお店かな」


3年前にはなかった建物が次々と増えていた。指をさして、朔斗に聞いてもぼんやりと真剣な顔をしている朔斗がいた。


「朔斗?」


 パシっと腕をつかまれて、顔を見合わせた。街灯で照らされた朔斗の顔が見える。私服に着替えていて、自分だけ未だにお祭り気分。なんだか急に恥ずかしくなった。

 そっと浴衣の裾を整える。


「梨花、俺、お前のこと前からずっと考えていた。学校でも家にいても、ミャーゴが梨花の家に間違って行った時も本当はラッキーって思ってたから」


いつもよりまっすぐな眼差しで見る朔斗が

真剣なことにごくんとつばを飲んだ。

こちらも何か返事しないといけないと

モジモジと手を触っていると、

朔斗の顔が近づいて、そっと唇が触れた。


あたたかくて、幸せすぎて心配になる。

朔斗の顔が離れていく。


「そういうことだから」


なんだか納得できない梨花。


「え、それはつまりどういうこと??」


「ってか、言わなくてもわかるでしょう。

 空気読めよ」


「言わなくちゃわからないことたくさんあるよ」


「おう、んじゃ、後ろ向けよ。」


「え?」


 梨花は後ろを振り向いて、

 朔斗の指が背中に触れた。

 浴衣の帯で指がなぞっていく。


「え?背中文字?

 ちょっと待ってよ。わからない。

 もう1回やって」


「なんでわからないんだよ。

 仕方ないな。もう1回だけな」


 朔斗は梨花の背中にひらがなで文字を

 指でなぞった。どうしても口に出したくなかった。


 梨花は本当はなんと書いてあるか知っていたが、何回も確かめたくて、朔斗に要求した。本当かどうか不安を解消したかった。


 『好き』ってその一言が言えない朔斗の想いを何回も聞きたかたった。言葉に出さない代わりの指文字で。わからないふりして何回も要求した。


 いやと言いながらも朔斗は、何回も書いてくれた。


 忘れられない夏の思い出になった。


 雲ひとつない星が煌めく夜空では

 流れ星が大きく飛んでいた。


 きっと願い事が叶うだろう。


 口には出さないが、心の中で

 『ずっと朔斗と一緒にいられますように』と願っていた。



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