第17話 揺れる恋心

お弁当を食べながら話してると、

頬にご飯粒が付いてることさえ

忘れてしまうほどだ。


梨花は、本当は黙っておきたかったが、

恵麻と美貴に問い詰められて、

結局は全部話してしまっている。


口外しないことを祈りたいと思ったが、

話したところで別にまだ交際しているわけではないし

特に問題もなさそうな気もした。


「なんかさ、それ話聞いてるとさ。

梨花さ、朔斗くんにもし告白するとするじゃん。

今まで全然な感じだったのに、実はすごく好きでしたってなったらさ、いわゆる蛙化現象にならない?」


「え?どういうこと?」

 梨花は恵麻と美貴を交互に見た。 


「魔法が解けて王子様じゃなくて、

 その逆ってことでしょう?」

 美貴は説明する。


「そうそう。

 かえるの王子様ってあるじゃん。

 童話の。

 かえるは、最後魔法で王子様に戻れるって

 話だったけど、蛙化はその逆でしょう。

 うわ、やっぱ違うやって感じに

 なりそうじゃない?

ずっと追いかけてるわけじゃん。

幼馴染でさ。梨花、愛されなさそうって

心配になる。」


 余計な心配事を恵麻は考える。

 奥底では実は朔斗を狙っていたりする。

 友達といえど、心は読めないものだ。


「そ、そうかなぁ。

 でも、まぁね。

 付き合えたらいいなって思ったりするけど、

 幼馴染って経験があるからどう接したらいいか

 わからなくなるのはあるよ。

 恵麻の言うとおり、蛙化現象おきそうだな。

 見た目はかっこよくても私に対しては

 彼女って扱いされないかもしれないし。」


「梨花の場合は逆に蛙扱いされるかもね。」


 美貴は笑いながらいう。

 恵麻は飲んでいた炭酸ジュースを

 吹き出しそうになった。


「え?!

 私が蛙ってこと?ひどくない?

 主人公それって私じゃなくて

 朔斗ってことじゃん。」


「そんなことないよ。

 蛙でも頑張るぞって話かもしれないじゃん。」


「美貴、それ、無理がある。

 フォローになってるようでなってない。

 そもそも蛙はディスってる。」


「あー、そっか。

 ごめんね。梨花。

 でもさ、朔斗くんの本音知りたいよね。」


「一緒に電車乗ってる時点でさ、

 もうそれはデートだと思うけどな。

 部活でもないし、生徒会でもないし。

 嫌なら断れたわけでしょう?」

 美貴はあごに指をあてて考える。


「あ、一緒に歩いて、一緒にご飯食べて、

 えっと、隣同士に電車の席座ったけど。

 これってどうかな。」


 恵麻と美貴は顔を見合わせて

 ため息をつく。


「もう、それは聞くまででもないよ。」


「そうだよ。

 それは絶対好きだね。」


 身を乗り出して、梨花は話し出す。


「でも待って、私聞いたんよ。

 はっきりさ。

 そしたら、朔斗、彼女いるって

 好きな人いるって言ってたの。

 だからライン交換するのも遠慮したほうが

 いいかなって言ったらはぐらかしたの。

 何、考えてるかわからないよ、本当。」


「ふーん、梨花遊ばれてる?」


「どうだろう。

 もう少しで何か起きそうじゃない?」


「楽しいね。」


「え?え?何、何。

 どういうこと?」


 話の途中でチャイムが鳴った。


「あ、授業始まるね。

 予鈴が鳴った。そろそろ教室戻ろうか。

 次って、化学室だっけ。

 実験あるかな。」


「うん、そうだね。

 教科書持っていかないと。」


 恵麻と美貴は、広げたお弁当を急いで片付け始めた。梨花は呆然として、手がとまる。


「ねぇ、話途中じゃない?」


「いいから、行くよー。」


「えーー、納得できないよ。」


 梨花は2人に遅れて、お弁当を急いで片付けた。


 恵麻と美貴は、隣同士話し合う。



「あの2人が付き合うって時間の問題だね。」


「私は1週間後くらいかかるかなと思う。」


「早くない?

 多分、焦らすよ、あの人は。」


「あーーー、いじわるな人だもんね。」


 ニヤニヤしながら話す。


「えー、私も混ぜてよ。

 なんの話してるの?」


 遅れてきた梨花は2人の間をはいる。



「さっきの続きだよ。」


「なんて言ってたか聞こえなかった。」


「梨花は知らなくてもいい話。」


「えーー、ひどい。」


「大丈夫、そのうちわかるって。」


「???」



梨花は美貴に両肩をポンと軽く叩かれた。

何が何だかわからなかった。


本鈴が鳴り始めた。


3人は廊下を駆け出した。





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