第二十七王子に転生したけど、使命なんてなかったので喫茶店を開く

AteRa

第1話 第二十七王子だってよ

 目が覚めると異世界だった。

 何が起こったのか、自分でもよくわからん。

 しかし気がついたら第二十七王子になっていた。


 何だよ、第二十七王子って。

 どれだけ子ども作れば気が済むんだ。


 てか、転生したってことは死んだのか。

 何で死んだんだっけ……?

 俺は前世の記憶を引っ張り出す。


 …………。


 そうだ。

 俺はコーヒーの飲み過ぎで死んだんだ。

 カフェインの過剰摂取だってさ。

 元々コーヒーが好きだったからな。

 ブラック企業にこき使われていたのも相まって、過剰摂取になってしまったようだ。


 そんな俺も、転生してすでに五年が経っている。

 え? 今までの経緯はって?

 そんなのないない。

 ただ母親に面倒見てもらって、ボンヤリと遊んで過ごしていただけだ。

 特筆すべき点はない。


 で、今は国王に呼び出されている。

 何か話があるみたいだ。


「あ、あ、アベルももう五歳だな」

「アレンです、父様」

「ああ、すまんすまん、そうだったな」


 初っ端から名前を間違えないでほしい。

 まあ王女も含めて四十人近く子どもがいるからな。

 いちいち覚えてもいられないか。


「ゴホン。でだ、お前は第二十九王子だったな?」

「第二十七王子です、父様」

「……そうだったな。まあ、第二十七王子にもなると、分けてあげられる仕事もない」

「はあ……」


 え、じゃあ将来好きにしていいってこと?

 自分で職業選んでいいの?


「お前に使命はないから、成人したら好きに生きろ」

「ありがとうございます!」


 俺は思わず感謝の意を伝えた。

 成人は十五歳だ。

 そんなに早くから自由にさせてもらえるとは。

 俺の言葉になぜか国王は困惑の表情だ。


「……お前はそれでいいのか?」

「はい! 僕は喫茶店を開こうと思います!」


 前々からやりたかったこと。

 それは喫茶店を開くことだ。

 コーヒーが好きだったからな。

 転生して好きなことができるとは……異世界万歳。


 前世では開店資金が足りなかった。

 しかし今回は王子出身。

 出自としてはこれ以上にないレベルだろう。


「きっさてん……?」


 俺の言葉に首をかしげる国王。

 なるほど、喫茶店なるものはこの世界にはないみたいだ。


「喫茶店とはコーヒーや軽食を提供する店です」

「軽食はわかるが、コーヒーとな……?」


 コーヒーもないのか!

 じゃあコーヒー豆を探し出すところから始めないとな。

 とりあえず十五歳になるまでになんとかしないと。

 運良く魔法の才能もあるみたいなので、それを鍛えつつコーヒー豆探しだな。


 よし、俺の人生の方針が決まったぞ。

 まだ五歳だけど。

 こうして俺は異世界での喫茶店開店を目指して頑張っていくのだった。

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