春の星々(140字小説コンテスト2025)テーマ「原」

ほしおさなえ主催・文芸創作コミュニティ『hoshi boshi』

春の星々(140字小説コンテスト2025)

テーマ「原」の漢字を使った140字小説 


(1)

「奥の戸は決して開けてはいけませぬ」

布団を敷いてくれた年配の仲居さんは意味深に告げた。

僕が「まるで鶴の恩返しみたいですね」と返すと、彼女は見るからに落胆する。

しばらくして勘違いに気がついた僕は恥ずかしさと申し訳なさで布団でジタバタ。

ここは安達ヶ原ホテル。あれは鬼婆演出だ。



(2)

亡き父が作ってくれたお雑煮の味を再現すべく、母と台所に立つ。醤油を足す。砂糖を足す。出汁を足す。塩を足す。なんだかどれもピンとこない。何が足りないのか。

ふと気づく冷蔵庫に佇む期限切れのめんつゆ原液。試しにお玉一杯ほど入れてみた。

そして、味見をした我々は叫ぶ!

「エウレカ!」



(3)

赤青黄、色の三原色。

「すべての色が作れます」

小学校の担任が言う。でも作った色は濁った。嘘つきめ。

進学校の私立に入った。美術は受験に関係がないお遊び科目。

でも美術教師は「紫は赤と青混ぜても濁って綺麗には作れない」といい、バイオレットの絵具をくれた。

彼女だけは大好きな先生。



<応募感想>

 また全部、一次落ち。

 応募総数も千を超えているそうで、かなり厳しい。

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