第参拾壱話:対決・野槌
目の前に居るのは傷を負っている巨大な野槌。
普通のより確実にでかいそれは、その分だけの呪詛を持っているだろう。
氷河の理で冷気を操れるようになった俺は、慎重に相手を観察しながらも……作戦を練っていた。
目のない相手だが、確実に俺に興味を持っているのは分かるような不快な感覚。
見られていると言うより……存在だけを認識しているという感じだが、どうやって俺の事を認知しているのだろうか?
「真神三人を頼んだ! それと野槌を見るなよ!」
「あるじは?」
「呪詛特化なら俺の方が相性が良いはずだから任せろ」
この戦闘でやってはいけない失敗は、これ以上子供と早苗さんの呪いを悪化させないこと。感覚だが、こいつの存在を認識するというのがトリガーになってるっぽいし、真神にも無理させられないのでやっぱり俺が対処するのが一番だろう。
「まぁ、とりあえず速攻だな」
それに彼女たちは既に病魔にやられてるし、早くそれを解除しなければどうなるか分からない。だからこそ、こいつにとれる選択肢は速攻だと決め――俺は冷気で刀を形作り、それを高速で射出した。
「――って堅った!?」
だが飛ばした氷刀は相手の皮膚に阻まれる。
かなり鋭利に作ったはずのそれすら弾く皮膚、それが相手の脅威を物語る。
あぁいう見た目で出来る事は限られるだろうし、想像出来る中で一番厄介なのが質量による突進攻撃。皆を巻き込みかねないし、それだけは防がなければならない――とそう考えたときだった。
「ッ風か!?」
急な風が吹き、何が起こったかと相手を見れば野槌が巨大な口を開いて俺の事を吸い込もうとしてくる。その吸引力は凄まじく、何かにしがみつかないと危ないくらいには周りのものが悉く飲まれていった。
木も岩も関係なく飲み込まれていく光景に、俺はすぐに後ろで守る皆の前に氷壁を作り――彼女らが吸い込まれるのを防いだが、その際に一瞬だけ気が抜けてか俺の体が浮いて相手の口元まで一気に攫われる。
「まず――でも」
いくら堅くでかい相手でも体内への攻撃は防げまい。
そう思った俺は、相手の口に向かって冷気の塊を投げつけた。それは相手に飲み込まれたのだが――次の瞬間にそれが爆発し、野槌は体のなからから凍り付き、軽い氷山のようなものに変化した。
「っし――勝利……だよな?」
呆気ないように見えるが、普通に危険な相手だったと思う。
俺の御業がなければきっと病魔にやられてたし、ここまで動くことが出来なかっただろう。あの野槌という妖怪は、弱った相手を食べていたんだろうなという想像させさせてきて――それを使って、ずっと生きていたんだろうと思わせてくる。
「えっと早苗さん達は無事か?」
「ッはい――ですが……あ、貴方は?」
「夜見です……あーこの姿じゃ分からないよな」
無事かどうかを確認すれば答えてくれたが、彼女は俺の事が分からないようだ。
なんでだと思ったのも束の間、災禍の恩寵を使っている時は姿が変わるのを思い出して、俺はそれを解除する。
本当に夜見さんだと漏らす早苗さんに苦笑しながらも、彼女たちに向かって解呪の術を使い蝕んでいた病魔を治療した。
俺の術は自然由来の病気とかは治せないけど、怪我に傷や呪い由来のものは治す事が出来るので、野槌の影響であったそれは治せたようだ。
「凄いんですね――体が一気に楽になりました」
「まじで良かった。治せるか心配だったからな……それより他に傷はないか?」
「はい、子供達は私が守ったので――私も無事ですし」
「強いんだな早苗さん」
「いえ、結局倒せませんでしたし。何より後から来た夜見さんに任せっきりでした」
「でも凄いだろ、あの野槌相手に子供守るってたいしたことだぞ?」
実際に思うんだが、彼女達が対峙してどこまでの時間が経ったのか分からないけど、野槌に傷をつけたのは彼女だろうし……それだけ命を賭けて子供を守ったって事になる。半端な覚悟で命を賭ける事など出来る人は少ないし、それなのに卑下するのは駄目だろう。
「……そう、ですかね。そんな事は無いかと」
「いや凄いって……とにかくそうだな、子供の体調が心配だし一応街医者の所向かおうぞ――真神、四人乗れる大きさになれるか?」
「ん……あるじ、任せて」
話が平行線になりそうなのと、病気という呪いを持つあいつのことを考えると医者に診て貰った方が良いと判断した俺は、時間も無いだろうしと真神に乗って早く移動することにした。
「ほら早苗さんも乗れって」
「そう……ですね、夜見さん改めて助けてくれてありがとうございます!」
[あとがきぃ!]
今回も読了ありがとうございます!
まじでこの作品が今まで書いた異世界ファンタジーの週間ランキングの最高位ですし、皆様には感謝しかありません! これからも沢山の方に読んで貰うために毎日更新していきますので、よければフォローや☆をお願いします!
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