小さい夏、小さい夏、見ぃつけた。

 夏が近いから現れる。


 あの羽音、あの痒み、あの膨らみ。


 何処からか現れては、チクリとして、素知らぬ顔して去ってゆく。


 蚊である。


 網戸、線香、殺虫剤。


 そして緊張の夏がやってくる。


 私の血は不味いぞ、夫の血は美味いぞ。


 どうぞそちらへお行きなさい。

 

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