感謝の戻り
母が父の介護をしていた時のこと。
離れて暮らしていたから、なかなか手伝いにも行けず認知症の父を同い年の母が介護していた。
デイサービスなども使っていたが、自分がめんどうを見れるうちはと言って聞かず、引っ越しも嫌がっていた。
「なんでそこまでできるん?」
一度、母に不躾にも聞いたことがある。
「あんひとはな、お礼を言いよる人なんよ」
「お礼?」
「そや、ありがとう、ありがとうを常に心掛けとって、今もたまにでるんや、思い出したように、私の名を呼んで、いつもありがとうと言うんよ」
祖父は厳しい人だった。だから父も厳しい…訳ではなく、上手いくらいに真ん中を行く人で、人見知りの激しい私には、感謝だけはきちんと伝えられる人間でありなさいと諭してくれる優しい父だ。母の方が大がつくほどの問題児で、かなりの不良娘だったそうだが、不思議と知り合い、くっついて今に至る。
父を語る母の横顔はなんとも言えないものであった。
言葉一つの深い愛、道連れするなら墓場まで、とはよく言ったものである。
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