ぽちゃん、ぽちゃん。

 仕事でトラブルが起こり、怒りながら残業をしてきた。午前様となってしまい、帰宅すると家は真っ暗であった。夫は夜勤だから不在だし、子供は一人暮らしだからいない。


 ふと、ぽちゃん、ぽちゃんと水の垂れる音が聞こえる。ホラーでよくあるあの音だ。キッチンから聞こえて来ている…。

 お化けなんてないさの自宅だから、真っ暗なままにキッチンへと入って絶叫しそうになった。


 光る目玉2つ、こちらをじっと見つめていた。


 「ニャア」


 と言ったので直ぐに飼い猫と分かって一安心して、撫でてやりながら水道を止めた。


 とたんに背筋か寒くなった。


 夫は16時には家を出る。


 私は午前様で帰宅である。


 ニャアの目は妙に鋭い。


 こいつはきっと落ちる水滴を数えていたに違いない。


 食べ物の恨みを募らせながら…。


 慌ててカリカリでない、お高い猫缶の封を切る。


 皿にもられるまで、視線が離れることはなかった。


 

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