お弁当

 私は料理はできるが、弁当作りは苦手である。夫も私も昼は外食だ。子供が小さい時には大変だったが、母が苦手であることを覚らされた子供は利口だった。


「お母さん、明日お弁当がいるの。こんなのにして欲しい」


 メモ用紙に食べたいものなどと全体的な構図の書かれて差し出された。私は下手でも叶えてあげたいから、その通りに作ってみたら意外とできて、子供からも好評であった。


 それ以来、弁当が必要な際は要望書を頂くようになった、やがて娘の絵も上達した。


 結果として、美味しそうな絵のお弁当と、見た目の微妙な現実の弁当が出来上がる。要望に叶わないからクレームがつく。


 私は一計を案じた。

 

 要望書の絵があまりにも美味すぎるので、コピーして弁当に入れて渡してやった。


 翌日、娘の作った美味しく見栄えのよい弁当が置かれていた。


 娘は栄養学専攻である。

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