2.学院編 前編

2-1.予言

15歳になった!



私のほうが少し誕生日が早かったので、もうすぐセーナも15歳だ。


殆ど同じ頃なので、いつの間にか私の誕生日会はセーナのも兼ねるようになった。

なんだったらセーナの方が祝われている気がする。


これが人望の差か!

私この家の娘なのに・・・





結局私の身長は全く伸びていない。

もはや、ゲームのリリィとは完全に別人だ。

私の推しのリリィはこんなチンチクリンでは無かった。絶対に。


精神だけでなく、身体的にもここまで変わるとは思っても見なかった。


まさか精神に肉体が引きづられている!?

誰の精神が幼いじゃ!





セーナはあれからも順調に成長していき、

中身も体も、大人の女性と遜色ない。


こちらもやはり、ゲームの時と全然違う。

出るとこは出て、引っ込むところは引っ込む素晴らしい体つきだ。

セーナは私が育てた!



村娘と公爵家メイドでは精神的な重圧も全然違ったのだろう。

ゲームの明るいセーナとは似ても似つかない。

もうこれ言うの何度目だろうね?






ともかく、もうすぐセーナは勇者だ

これでガンガンレベル上げできるようになる!



私にしか差はわからないくらいだが、

心なしか、最近のセーナは落ち着きが無い気がする。

流石に勇者だなんだという話をさんざんしてきたので緊張しているようだ。



そうこうしている内に、セーナの誕生日を迎えた。


そして、その日の内に王宮から早馬が来て、王宮に連れて行かれるのだった。



セーナの強い要望で私も同行することになった。

今まで私を屋敷から出したがらなかった父がよく許したなと思っていたが、

父いわく、どうやら王様ご本人が私にも興味を持っているらしい。




なぜ私?セーナじゃなくて?

王子の婚約者だからだろうか。



まあ、私も予言については気になっていたし、幸運だったと思っておこう。


私の思考放棄を察したのか、セーナが小声で言う。


「警戒してください。お嬢様」


何かあるはずと目で訴えてくる。


我が頭脳であるセーナにも意見を聞きたいところだが、

父様もいる馬車内で余計なことは言えない。





セーナの懸念も、もっともだと思いもう一度考え込む。


まず、予言の内容はゲームと同じなのだろうか?


少なくともセーナの現在地については変わっている。

予言されたであろう当日中に迎えが来る以上、予言の中でアランシア家が言及されているはずだ。




魔王の復活はどうだろう。

この日程が大きくずれて、婚約破棄より前になったりしたら目も当てられない。

婚約破棄を迎えないと私の称号が手に入らない。

称号によって私の成長限界を解除できなければ、魔王討伐に参加できなくなる。





そういえば、セーナさんは男性に全く興味がないようなんですが、

婚約破棄イベントは本当に起こるのでしょうか。



一応、レオン王子ルート以外でも必ず発生している以上

この世界でも起こると思っていたけど。



実はこの事はセーナに殆ど話していない。

せいぜい、レオン王子との婚約はいずれ破棄されること、

私は彼との結婚にも王妃の立場にも全く興味は無いが、

彼自身はとても良い人だし、私も好ましくは思っていると伝えてあるだけだ。


10歳の頃から定期的にお茶会したり、手紙のやり取りも続けている。

その場面をセーナも見ているので、感情の読めるセーナなら私の言葉に嘘がない事はわかっている。




セーナにその意思があるのなら、

セーナがレオン王子とくっついて幸せに暮らしてくれれば万々歳だ。

そうなれば、セーナのついでにレオン王子も幸せになってくれるだろう。

それなりに仲良くなった相手との婚約が無くなった上、不幸になられたら複雑だし。



今の私にとってセーナの幸せは何よりも優先される。

勝手に運命を捻じ曲げといて烏滸がましいけれど、

やってしまった以上は全力で達成しよう。


まあ、三年間の学生生活で攻略対象の誰かしらと深く関わっていけば、

セーナも恋に目覚めると思う。きっとたぶん。






私自身は卒業後は冒険者になって世界を旅したいと思っている。

せっかく異世界転生したのだからマストでしょ!

この国には冒険者もギルドも存在しないけど、世界中旅してればそのうち見つかるでしょ。


公爵の娘にそんなことが許されるわけ無いと言われればぐうの音もでないが、

それでも私は自分の欲望を優先するだろう。これまでそうしてきたように。

たとえそれで勘当されたとしても。





予言の事に思考を戻す。

セーナが勇者であることも変化は無いだろう。

名指しで王宮に呼びつけられた以上当然だ。



思考に埋没していた私をセーナが物理的に引っ張り上げる。

気づくと馬車は停止していた。


いつまでもぼさっとしていたら父上にどやしつけられるところだった。

もうなんか目つき怖いし。



流石、我が右腕!

もう私の全身はセーナで良いんじゃないかな!

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