1-3.5.レーヴェン視点


娘が目覚め心底安堵した。


一時はもうだめなのかと思いもしたが、

奇跡的に回復し、今では毎日屋敷中を駆け回っている。


病にかかる前のリリィは賢くお淑やかな、とても四歳児とは思えない子供だったが、

記憶喪失の影響なのか、年相応に活発な子になった。


とにかく生きていてくれたという喜びも強いが、

本当にリリィなのだろうかと不安にすら思う。


妻のソフィは

「まだ幼子なのだから気にすることないのよ、素直に喜びましょう」と言う。



そんな時に、リリィが奇妙な質問をして回っていることを耳にする。

「レベル」「ステータス」「称号」という言葉に聞き覚えが無いかと。



どうやら魔物を倒した際に生じる成長のことを知りたがっているようだ。





「なぜあの子が知っているんだ!」

一人になった執務室で憤る。


リリィが「称号」と表現している事の内容は国の最重要機密だ。

屋敷内でそのことを知るのは自分だけだ。

妻は疎か、家督を継ぐことになる長男ですら、現時点では知らされていない。


幼い娘が外の人間、それも国の中枢に関わる人物と話をする機会などあるはずもなく、

屋敷の誰かから聞いて知ったということもありえない。

途端に娘の事が不気味になってくる。


ともかくも、外部にこの話が漏れるわけにはいかない。

かといってあからさまに口止めをすればなにかあると勘ぐられるかもしれない。

対応方法を慎重に考えつつ、リリィの今後の事も考える。



教育係を通して少しずつコントロールして行くことにしよう。

幸い記憶喪失の件や、性格の急変もあり、

周囲の者たちもリリィの言動に不自然さを感じている様子はない。



一旦結論を出し、頭を切り替える。

妙な態度になって家族や家臣達を不安にさせるわけにはいかない。

もちろん、リリィに対しても。


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