十七話 その三
「ご
ヴィルヘルムは束になっている資料の何枚目かを引き出して、ヴィオラに示して見せた。
「これはスナート教開祖一族の家系図だ。この、丸をつけてある人物たちは歴代教皇になった者たちだ。このとおり、時代はまちまちだが、みんな開祖の血を引いている」
しかし彼の説明を聞いても彼女はいまいち
「確かに近親で結婚すれば血は濃くなるかもしれませんし、器足る身体の持ち主も生まれるでしょう。でも、これだと自分の一族に権力を独占させたかった開祖が転生をでっちあげたようにも思えますわ。一族であれば秘伝の奥義も秘密裏に継承できてしまいそうですし――本当に『転生の秘技』なんてありますの?」
すると、納得いかない様子のヴィオラの反応を予測していたかのように、ヴィルヘルムはにやりと不敵に笑ってみせた。
「最初は僕もただの茶番じゃないかと思った。でも違うんだ。――ここを見て」
そう言って彼はまた別の紙を引き出して机に広げた。それに顔を寄せたヴィオラは、書き込まれた内容に目を通すと、なるほど、と頷いた。
「――すべて繋がっているのですね」
転生のメカニズムはこうだ。
開祖の魂の継承を証明する奥義は、そもそも転生を司るものである。そして転生を示す第一段階としてこの奥義の習得が求められる。
ではいかにしてこの奥義を会得したかを認めるかといえば、それは神話のメテムスと同じく、死した生物を別の生物へ生まれ変わらせる奇跡を目の前で起こさせるのである。
例えば今しがた死んだ小鳥の傍で教皇が祈ると、ちょうど近くにいた牛が産気づいて子が生まれる、といったことが起これば、転生と認める。
ちなみに転生の奇跡が起こるとき、祈る教皇の手は黄と青の
これだけでも証明としては充分かと思われるが、万が一、奥義が一族間で秘密裏に伝承されていては元も子もないので、第二段階として、亡くなった前教皇を別の生命に生まれ変わらせる奇跡を起こさせる。
もしこの者が真に開祖の魂を継いだものであれば、同じく開祖の魂を継いでいた前教皇を別の生命に転生させることはできないはずだ。
なぜならその魂はまさしく自分自身に宿っているのだから。
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