十六話
ヴィルヘルムによれば、『メテムスとサーラ』という神話は地域信仰であり、このミグラスの地域以外で耳にすることはほぼないという。
「ちなみに舞姫たちが持っていた星は、青い方が『サーラの星』、黄色い方が『メテムスの星』というんだよ」
女は、なるほど、と手を打った。舞姫たちが最後に手を合わせたのは、二つの星が重なることでメテムスとサーラが永遠に結ばれたことを表すためだったのだ。
「素敵なお話ですわ」
「確かに
聞いていてヴィオラは渋面した。この賢者は、なんて
「ヴィルヘルム様はずっと独り身でいらっしゃればいいわ」
「なんでさ!」
「というか貴方、千年生き長らえてパートナーにもう一度お会いになるんじゃなかったかしら? 大丈夫ですの? 気味悪がられませんこと?」
これにはさしものヴィルヘルムでも、ぐうの音もでなかった。口を尖らせてヴィオラを見つめることしかできない。
確かに、千年後また会おうと約束はしたものの、実際その時を迎えた際にアリスがどんな反応をするか考えると、今自分が言ったことがもしかすると現実に起こりそうで恐ろしくなってきたからである。
普段は劣勢にまわってばかりいるので、この状況に気をよくした彼女はさらに畳み掛ける。
「いっそサーラのように小鳥さんにでも生まれ変われば、まだましかもしれませんわね。可愛げがある分」
ヴィオラの憎まれ口に何か言い返そうと口を開きかけたヴィルヘルムだったが、その頭脳に不意に
さすがに言い過ぎたかと焦った女は慌てて謝罪するが、それを制すると、賢者は何事か呟きはじめた。
「――永遠の命、魂、生まれ変わり、転生」
「転生」という言葉を口にしたところで、ヴィルヘルムは、はっとした顔でヴィオラの手を握る。
何が起こっているのかわからないといった様子で、戸惑いを
「『転生』――この手があったか!」
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