実録 某高齢者介護施設の日記

百田 万夜子

第1話 僕も!

ジョウさん。昔は大手企業で、バリバリ働いていたとお聞きします。

ジョウさんは「僕も!」が口癖です。周りの利用者さまが何かをしていると「僕も!」と大声でおっしゃいます。職員が他の利用者さまと交流していると「僕も!」と。

とにかく、何もかもに「僕も!」と仰るのです。しかも怒るような言い方でなく、純粋な声で、ポンと腹から発声するから面白い。



入浴の日でした。

私は、お風呂から上がった女性の利用者さまの髪の毛を、ドライヤーで乾かそうと声を掛けました。

「さっぱりしましたね。髪乾かしますよー」

すると「僕も!」と、少し離れたところで正面から見ていたジョウさんが大声で言いました。


が、ジョウさんは坊主頭なんです。私と近くに居た職員は顔を見合わせると、吹き出してしまいました。

「ジョウさんは、ちょっとドライヤーじゃ乾かせないねえ。タオルで大丈夫ですよ」と、私は何とか返しました。


あの日は、これが一番のおもしろエピソードでした(笑)。

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