【波紋】

N木がやくざ組織の男に暗殺された事件の翌日の朝6時過ぎであった。


徳常町にある支店に、ガサ入れが入った。


州内と淡路島にある支店で発生したストライキは、収束するどころか日増しにエスカレートした。


この日の午後であった。


徳常町にある支店では、新居東警察署の刑事たちによる家宅捜索が続いていた。


この時であった。


殺されたN木が使っていた支店長のデスクの引き出しに危険ドラッグが大量に入っていたのを若手の刑事が発見した。


さらに、N木のロッカーの中からハーブを吸引する器具が見つかった。


そのまた上に、N木が特別区内と高松市内の支店の職員たちに危険ドラッグを売買していたと見られる書面が大量に発見された。


これにより、南海道電力は業務を続けていくことができなくなった。


職員たちによるストライキは、6日目に突入した。


この日、ストライキに加わっていない10人の職員が行方不明になったことが判明した。


行方不明になった10人の職員に、日名川会を通じてN木から危険ドラッグを購入した疑いが出た。


州警は、10人の職員たちを薬事法にテイショクする容疑で逮捕状を発行した。


同時に、警察庁は10人の職員を全国に特別手配した。


その日の夕方5時過ぎであった。


ところ変わって、州警本部の中にある本部長室にて…


オレは、本部長に対してこれまでに判明した事実を報告した。


報告を聞いた本部長は、大きくため息をついたあとオレに言うた。


「ストライキは収束するどころか、かえってエスカレートして行くばかりか…そんな中で契約者が次々と離れて行く…淡路島の支店が閉鎖されることが決まった…何とも言えん…」

「ええ…そのようでございます。」

「達雄、他になんぞ分かったことはあるのか?」

「本部長、南海道電力の社長と日名川会の親分が暗殺された事件と三豊西区で暴走族のグループが暗殺された二つの事件で、新たな事実が判明しました。」

「どう言うことだ?」

「ふたつの事件は、新居西区・朔日市ついたちにある例のやくざ組織の男が起こした犯行です…例のやくざ組織とは、日名川会から絶縁されたやくざたちで結成された組織です…彼らに軍資金を提供したのは、今治東区にある田島組たじまの組長であることが判明しました。」

「田島組。」

「ええ…田島組たじまは、遠い昔に松山のやくざ組織の事務所にダンプカーで突っ込んだ事件を起こしたあのやくざ組織です…日名川会とナワバリをめぐるトラブルが原因で、血みどろの抗争を繰り返していたようです。」

「日名川会と血みどろの抗争をくり返していたのだな。」

「ええ…他にも、南海道電力の関係者と電気料金が滞納されたことが原因で過去にトラブっていたことがあらたに判明しました…これまでに分かっている事実は以上です。」

「そうか…ご苦労だった。」


オレは、本部長にこれまでのいきさつを全部話した。


本部長は、経過報告をひと通り聞いたあと大きめのイスにこしかけたあと窓ぎわへ向けた。


本部長は、夕暮れ時の街なみをながめていた。


本部長室を出たオレは、事務所に帰った。


ところ変わって、事務所にて…


オレは、500ミリリットルのサントリータコハイプレーンサワーをのみながら夕暮れの街をながめていた。


南海道電力に関連する事件は、より深刻な状況におちいった。


ストライキがエスカレートしたことにより、淡路島の各地にあった支店はすべて閉鎖に追い込まれた。


もうアカンな…


南海道電力一社だけではなく、日本全国の電力会社でも契約者離れが始まった…


日本の電力業界は、これからどうなるのか…


オレは、そんなことを思いながら事務所の窓に写る風景をながめた。


遠くに見える製紙工場の煙突から、白い煙がもくもくと空に上がっているのが見えた。


その日のよいのうち(夜9時〜深夜0時)のことであった。


中央区川之江のアーケード通りの裏の路地で事件が発生した。


オレはこの時、磯原さんと一緒にアーケード通りを歩いていた。


近くで救急車のけたたましいサイレンが鳴り響いた。


それを聞いた磯原さんとオレは、現場に駆けつけた。


この時、ロチュー(路上駐車)している車が救急車の進路をふさいでいた。


救急車のスピーカーから『進路を空けてください…』と呼びかける声が聞こえた。


それなのに、車の所有者がいない…


一体、どこに行ったのか…


救急車に乗っていた60代の男性が『車を動かしてくれ!!妻が急病なんだよ!!』と泣きそうな声で叫んでいた。


それを聞いたオレと磯原さんが現場に到着した。


同時に、車の所有者の40代の男が現れた。


60代の男性が『車を動かしてくれ!!』とお願いをしているのに、男は酒をのんでいるから出来ないと言うて逃げようとした。


思い切りブチ切れたオレは、男のもとへ詰め寄った。


「コラ!!車の所有者!!逃げるな!!」


車の所有者の男は、よれよれの体で逃げ出した。


この時、200メートル先の交差点で白のイプサム(ミニバン)が通りかかった。


(キーッ!!ドスンドスン!!)


逃げた男は、ミニバンにはねられた後即死した。


男をはねたミニバンは、その場から逃走した。


救急車で搬送することが困難になったので、急病人は、ドクターヘリに乗り換えることになった。


(パタパタパタパタパタパタパタパタパタパタ…)


急病人は、中央区三島にある州の救急救命センターへ緊急搬送された。


急病人の60代の女性は、あと数分遅れていれば生命に関わる重大な事態におちいる危険リスクがあった。


問題はどうにか解決した。


しかし、磯原さんとオレは現場に到着した州警の刑事たちと一緒に捜査に協力することになった。


磯原さんとオレは、救急車の進路をふさいでいたネイビーのボルボの中を調べた。


そしたら…


「あれ?」

「達雄。」

「これどう言うこっちゃねん?」

「どうしたのだ?」

「あのクソヤロー、南海道電力の四国中央支店の経理ケーリの男みたいや。」

「どうして分かったのだ?」

「ダッシュボードにあったソラト(太陽石油)のロゴ入りの楽天のクレジットカードで分かった…カードには、カタカナでナンカイドウデンリョクと書かれていた…あのクソヤローは、会社のゼニでガソリン代を決済していたみたいや。」

経理ケーリの立場を利用して、職場のクレカでガソリン代を決済していた払っていた…」

「ああ、その通りだ。」


そんな時であった。


オレのエクスペリア(スマホ)のライン通話の着信音が鳴ったので電話に出た。


電話は、オノさんからであった。


「もしもしオノさん…今どこにいるのだ?…えっ?吉野川ハイウェイオアシスにいる?」


ところ変わって、みよし東区の徳島自動車道の吉野川サービスエリアにあるハイウェイオアシスにて…


オノさんは、ダンさんと警察署の刑事たちと一緒ハイウェイオアシスの駐車場にいた。


オノさんは、受話器ごしにいるオレに言うた。


「達雄さん…今みよし東区の吉野川サービスエリアのハイウェイオアシスにいます…もしもし…実はですね…駐車場に車4台が放置されていました…車の所有者4人が車を放置したあともう1台の車に乗り合わせてどこかへ行ったようです…4台の車は、レッカー車で移動しました…そのうち、ネイビーのトヨタアクアの所有者が分かりましたので…報告します。」


この時、オレはサービスエリアの駐車場に長時間駐車をしていた4台の車のうち1台の所有者が南海道電力の職員の40代の男であったことを聞いた。


オレは、おどろいた声で言うた。


「何やて!?それホンマか!?オノさん!!レッカー車で別の場所へ移動した車を警察署へ持って行くことはできるか!?大至急頼む!!あと、新しい情報が入ったら大至急オレに知らせてくれる?…ああ、頼むわ!!」


それから10分後であった。


吉野川サービスエリアのハイウェイオアシスに、サービスエリアの近くのレジャー施設に遊びに行ってたグループが帰って来た。


4台の車の所有者の男たちが到着した車から降りた時であった。


ダンさんとオノさんと警察署の刑事たち30人が男たち4人を取り囲んだ。


ダンさんは、男たちに凄んで行った。


「オラオドレら!!今までどこへ行ってた!?」

「どこへ行こうといいじゃないかよ!!」

「そうだよ!!」

「オドレら!!そこ動くなよ!!」


ダンさんたちは、男たちを怒鳴りつけたあと検査を始めた。


この時、男たち全員の呼気からアルコールの成分が検出された。


その後、ダンさんとオノさんは車の中を調べた。


この時、車の中からアルコール濃度の高いお酒のビンが大量に発見された。


その上にまた、危険ドラッグが大量に見つかった。


さらにそのまた上に、シンナーや覚醒剤ジャブも大量に発見された。


ダンさんは、よりし烈な怒りをこめながら男たちに言うた。


「オドレら!!飲酒運転に加えて、ジャブもやってたのか!?」

「知らねーよ…」

「オドレら全員飲酒運転と覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕する!!」


男たちのグループは、飲酒運転と覚せい剤取締法違反の容疑でケーサツに逮捕された。


その翌日のことであった。


吉野川サービスエリアのハイウェイオアシスの駐車場に長時間自動車を駐車していた車の所有者全員が南海道電力の職員であったことが判明した。


職員が飲酒運転と覚せい剤取締法違反の容疑などでケーサツに逮捕された…


これによって、企業のイメージが大きくダウンした。


同時に、全国民の信頼を大きくそこねた。


この日のテレビ番組は、全局一斉に放送開始時間から通常番組を取りやめて緊急報道特番に変更された。


朝10時頃に経営陣クソジジイどもに謝罪の記者会見が生で放送された。


本社の副社長と残っている幹部の人間どもがオイオイオイオイ泣きながらテレビカメラの前で言うた。


「このたびは…わが社の従業員が飲酒運転をした上に…危険ドラッグとシンナーと覚醒剤を大量に保有していた上に…服用していた形跡があった…わが社の職員がケーサツに逮捕されたことを心から深くおわびを申し上げます…わたくしどもは…飲酒運転撲滅のために職員たちに分かるまで教育しました…薬物の問題についても分かるまで教育しました…暴力団関係者とのお付きあいをしてはならないことも分かるまで徹底して教育したのですよ…問題の職員たちに対して…わが社は、厳しい処分を下しました…取り上げるものは全部取り取り上げました…最後に…ストライキを起こした全職員を会社に対するハンギャク罪で刑事告発したと同時に、ストライキによって生じた損害賠償を全職員たちに請求する裁判を憲法裁判所(最高裁判所にあたる)に提訴しました…1京円(いっけいえん)の損害賠償を全職員たちに請求します…ストライキを起こした職員どもは甘ったれている…あのクソバカどもは自由と権利ばかりを求めていた…『カネ』『やすみ』『結婚相手がほしい』…クソバカどもはどこのどこまで甘えているのだ!?…あのクソバカ職員のせいで、わが社は経営破綻寸前におちいった…あのクソバカ職員たちのせいだ…あのクソバカ職員たちが全部悪いのだ!!許さん!!」


副社長は、職員たちをボロクソになじりまくったあと記者会見を終わらせた。


その後、経営陣クソジジイどもは会見場をあとにした。


記者たちは、大声をあげながら経営陣クソジジイどもに言うた。


「ストライキを起こした職員全員を憲法裁判所に提訴したのは本当ですか!?」

「副社長!!答えて下さい!!」

「あなたたちは100パーセント悪くないと言うコンキョはどこにあるのですか!?」


その頃であった。


本店のビル前に待機していた各局の記者たちが生中継で記者会見の模様を伝えた。


このニュースが報じられたあと、各局の電話窓口に苦情の電話がサットウした。


『南海道電力は許さない!!』

『日本の電力業界は信用できない!!』

『あの経営陣クソジジイどもをぶっ殺してやる!!』


………


南海道電力…いいえ、日本の電力業界に対する信頼は完全に0になった。


そんな中であった。


ところ変わって、JR栗林駅の近くの通りにて…


南海道電力の副社長のひとり娘(9歳)が、学校から家へ向かっていた。


その時であった。


付近に止まっていた黒いホンダフィットを運転していた男がひとり娘に声をかけた。


「お母さんが急病で倒れたから、一緒に病院へ行こう。」


副社長のひとり娘は、男の言いなりになって車に乗り込んだ。


この時、副社長のひとり娘が誘拐された。


南海道電力の社長室にて…


副社長と残っている幹部たちは、やくざの顧問弁護士と数人のチンピラたちと一緒に打ち合わせをしていた。


その時であった。


副社長の家から電話がかかって来た。


電話は、副社長が出た。


受話器ごしにいる奥さまが、泣きながらひとり娘が誘拐されたことを伝えた。


「あなた!!急いで帰って来て…(ひとり娘)が誘拐された!!」


奥さまから知らせを聞いた副社長は、びっくりした。


なんてこった…


どうすればいいのだ一体…





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