行き当たりばったり異世界旅行
翡翠 珠
1ページ目 異世界
…………。
「どこ!?ここ!!!!」
俺の名前は
……そんなことはどうでも良くて、今現在俺は幼なじみの計画したスカイダイビングの途中に、見たことの無い世界に飛ばされた。……異世界と言うやつだろうか?
その幼なじみ、
「ね、ねえどうするのこれ。パラシュート機能する?」
真横で一緒に落下中である。
見るからに現実世界では無いような雰囲気な上、遠くには空を飛ぶ謎の生物まで見える始末。
どうすればいいんだこれ……。
「ととととりあえず地面に着地しないと……」
「パラシュートパラシュート!!!」
紐を引っ張るとしっかりとパラシュートが開く。
それに伴って落下速度が遅くなり、無事助かったと思った途端、先程の空を飛ぶ生き物が急速にこちらに向かってきているように見えた。
赤い体に大きな翼を羽ばたかせたいかにもな見た目の生物。厨二病が一度は夢見るあの生物。
ドラゴンである。
そのドラゴンが俺たちに向かって勢いよく、赤く燃え上がる炎を吹き出した。
「どっだっえ!?な、なにあれ!?」
「しらんしらんしらん!!!どうすんのこれ!!」
焦る俺たちのパラシュートを無慈悲にも焼き尽くすドラゴンの炎は、幸か不幸か俺たちに当たることは無く、パラシュートだけを綺麗に焼き切った。
機能を失ったパラシュートは俺たちを地面へと加速させる。
その時、俺の頭の中に直接声が聞こえた。
機械音声のような、無機質な声が。
『スキルを発動してください。』
スキル……?
ゲームとかでよく見るあれの事か?
スキル発動って言ったって…どうするんだよ。
まずステータスを見ないと……ってそんな余裕ないだろ!?
なんてことを考える俺は無慈悲にも落下を続けている。
ユイは隣で落ちながらこう言った。
「スキル発動!
そう言うとユイの背中、肩甲骨辺りだろうか。
その位置から、白く太陽の光を反射する美しい翼が生えてきていた。
それを羽ばたかせて俺よりも先に下に行ったかと思えば、綺麗に着地を成功させていた。
「はあ!?どうやったんだそれ!!」
大声で下にいるユイに向かって話す。
着地をして翼を仕舞ったユイはこちらに気づいた様子でこう返した。
「頭ん中にいきなり出てきたの!!!さっきの声の後になんか聞こえたでしょ!?」
さっきの声……。スキル発動してくださいみたいなやつか。
あの後に聞こえた声なんて……何も無かったような……。
『固有スキル、[
固有スキル……?
とりあえず言えばいいのか…?
「固有スキル!![
俺は声を上げて言う。
が、これと言った変化は起きず、そのまま落下を続けることになる。
ドラゴンはと言うと、俺のパラシュートを燃やしたかと思えばどこかへ行ってしまったらしい。
さて、どうしようか。
「あっこれ死ん―――――――――――――。
***
「……イ……スイ!!」
「うおあああ!?」
強めのビンタを食らって声を上げる。
目を開けるとそこにはユイが居た。ユイは俺が目を覚ましたのを見ると涙ぐんでこう言う。
「……生きてるの?」
「あ……?あっ!そういえば俺思いっきり地面にぶつかったよな!?」
「そうなんだよ!?嬉しいけどさ……なんで……1回バラバラなったし……」
「バラバラとか言うなよお前!!」
「だってバラバラだったもん!!!」
なんて言い合いしているとふと近くにある森の奥から、一人……の人物が歩いてきた。
女性のような見た目だが、頭にはキツネのような大きな獣耳。
腰あたりにはこれまたキツネのようなモフっとした尻尾が生えている、いかにも獣人と言った見た目の人物だ。
「いやお前俺生きてるんだし別にいい……。
って、え?誰だ?」
「……アニリアのリン。貴方たちは?」
「え……っと俺はスイ。こっちはユイ……なんだけど、ここってどこか分かったり……?」
「ん。ここはシリアの郊外だけど……、貴方達、どこの人?」
「……日本……。って分かる?」
「ニホン?聞いた事のない土地…。とりあえずそこにある私の住んでる街までくる?何かわかるかもだし。」
「あ、ああ。そうだな。お言葉に甘えさせてもらうぜ。」
「じゃあ着いてきて。」
信用するのは早すぎる気もするが、他に当てもあるわけでも無いので大人しくリンについて行くことにした。
隣にいるユイは気まずそうに黙ったまま、俺の裾を掴んで着いてきている。
……まだこの世界について俺たちは何も知らない。
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