3章-首都の珈琲警察-
13『無認可コーヒーと報酬』
小国『ウリ・バルデン』の首都『バレアタット』にて…3~4階建てのレンガ造りの建物たちが並ぶ街の一角に佇む一件の家屋…
その扉の前に、キシルとブルボン、そして首都の案内役としてのファイネストが神妙な面持ちで立っている。
「確かに匂うけど…本当にこの家かな?」
そう真剣に問い掛けたキシルの右腕にある腕章には…ケトルとコーヒーカップが描かれており…ケトルの細長い注ぎ口に対して、逆さまに架けられていたであろうコーヒーカップが、飲むなと言わんばかりに四散している。
「うん…ここからコーヒー豆の匂いが強い。」
そう答えたファイネストの左目側には…月を彷彿とさせる色合いの片眼鏡に、2つの
そして、ファイネストの左手には指定した匂いを探知し、その方角を示すコンパスのような術式が機能している。
「ファイネストさんの術式からも、アウトなのは確定みたいね…それじゃあ…」
そう意気込みを見せたブルボンも、土星の色合いに似た片眼鏡と3つの
「あっ、ちょっとまっ…」
キシルの静止の言葉も虚しく、ブルボンがハルバートを勢い良く振り下ろし…轟音と粉塵を立てて、目の前の扉を粉砕する。
「!?…なんだお前らは?人様の家の扉を粉砕しやがって!」
住人であろう男性2人のうち1人が、驚きと怒りを露にする。
「…って、おい…あの腕章…『珈琲警察』じゃないか!?」
もう1人の男性が、最近、首都で流れ始めた情報を思い出す。
「話が早いじゃない、それじゃあ…大人しくしといてくれる?家の中を調べさせてもらうから。」
ブルボンが更に室内へ踏み込もうとした瞬間…
「ふざけるな!このガキどもが!」
激昂した男性1人が、術式を展開し…創造したサーベルでブルボンへと襲いかかる…
男性の大きな動きに対して、ブルボンは不敵な笑みを見せつつ…最低限の小さな動きで、その一撃をかわし、男性が手にしている武器を弾く。
そして、先端の刃ではなく…持ち手の更に下部にある丸みを帯びた鉄製の装飾で、相手のみぞおちあたりを突き…行動不能にさせる。
「ひっぃい…」
混乱したもう1人の男性が、シングル・アクションオンリーの
キシルの
「他には誰もいないみたいね…」
室内を改めて見渡したブルボンが告げる。
「二人とも、お目当ての物があったよ…」
奥の部屋へと進んでいたファイネストが、キシルとブルボンに声を掛ける。
「本当にあった…」
その言葉に誘われたキシルが、焙煎されたコーヒー豆と焙煎をする為のフライパン等の道具一式を見つける。
「これで今日の仕事は終わりね…」
一息ついたブルボンは、武装を解除する。
「無許可の珈琲焙煎の匂いを辿って、扉をぶち破り…制圧する簡単なお仕事です…ぷっふ、なんてね…」
ファイネストの口角が僅かに上がる。
「まぁ、簡単かどうかは分からないけど…報告して報酬を貰いに行こうか。」
キシルの言葉に対して、ブルボンとファイネストが嬉しそうに頷く。
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