第3章: 古びた屋敷の秘密

西海正隆は、小さな町での事件に対する好奇心と責任感に駆られ、古びた屋敷の秘密を探る決意をした。彼は地元の図書館で調べた情報をもとに、屋敷の歴史や老人の過去に関する手がかりを集め始めた。


屋敷は町の外れに位置し、高い塀に囲まれていた。正隆は再びその場所を訪れ、事件が起きた現場の雰囲気を感じ取ろうとした。警察の捜査は続いていたが、正隆は屋敷の外周を慎重に歩きながら、何か手がかりがないかと目を凝らしていた。


屋敷の門は閉ざされていたが、隙間から中を覗くと、手入れが行き届かない庭が広がり、その先には古びた洋風の建物が見えた。彼は門の外でしばらく考えた後、意を決して町の人々に屋敷の過去について尋ねることにした。


町の広場に戻ると、正隆は市場で果物を売っている老婦人に話しかけた。「すみません、この町の外れにある古びた屋敷について何かご存じですか?」


老婦人は一瞬驚いた様子を見せたが、やがて静かに語り始めた。「あの屋敷ね…。あそこには昔、オオクボさんという名士が住んでいたの。彼は町の歴史や文化を守るために多くの尽力をしてくれた人だった。でも、彼の死は誰も予想していなかったわ。」


「彼の家族については?」正隆はさらに尋ねた。


「オオクボさんには息子が一人いたけれど、何年も前に町を出て行ってしまったの。町との関わりもほとんどなくなっていたから、戻ってくることはなかったわね。オオクボさんは孤独だったのよ。」


老婦人の話を聞きながら、正隆は屋敷の中に隠された秘密が少しずつ明らかになり始めていることを感じた。彼は町の他の住民たちにも話を聞き、オオクボ老人の生活や彼が関わっていた事業についての情報を集めた。


その夜、正隆は宿に戻り、集めた情報を整理して考えた。老人が町の歴史や文化を守るために尽力していたこと、そして彼の家族が町から離れていたことが、事件の背後にある何らかの動機と関係しているのではないかと思い始めた。


翌日、正隆は再び屋敷を訪れ、周囲を慎重に探索することにした。警察の目を避けつつ、彼は庭の一角に隠れるようにして残された古い井戸を見つけた。井戸の縁には、長い年月を経て風化した石碑があり、そこには古い日本語で何かが刻まれていた。


正隆は井戸の中を覗き込み、そこで一枚の古い手紙を見つけた。手紙は雨風にさらされていたが、まだ読み取れる部分が残っていた。彼は手紙を丁寧に広げ、そこに書かれた内容を読み始めた。


手紙には、オオクボ老人が町の未来を憂い、町のために尽力していたことが綴られていた。また、彼が何者かに脅迫されていたこと、その脅迫者が彼の命を狙っていることも記されていた。正隆はこれを手がかりに、事件の背後に潜む真実に迫ることを決意した。


手紙の内容を確認した正隆は、すぐに警察に知らせるべきかどうか迷った。しかし、まずは自分自身でさらに調査を進めることを選んだ。彼は町の歴史や人々の繋がりに関するさらなる情報を求め、町の記録を調べ続けた。


こうして、西海正隆は古びた屋敷の秘密を解き明かすための旅を続け、事件の真相に迫っていくのだった。彼の好奇心と探究心が、町に隠された闇を照らし出す光となり、新たな展開が待ち受けていることを予感させた。

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