バレンタインは甘ったるい その3

 ―栞の場合―


 3月14日金曜日。3年間通っていた高校も卒業し、目指していた第一志望の大学に合格。今は零央との同棲の為に少しずつ荷物などを移動させている時期であり、今日は例の日でもある。


「少し遅れたが……ほら、バレンタインだ」


 週末ということもあって零央の部屋に泊まる為にと訪れ、一緒に晩御飯を食べた。そして食後のお口直しにと容器に入れて用意していたチョコを隣に座っている零央へと差し出した。


「手作りか?いつの間に……」


「実は前々から準備はしてたんだ。本当は当日に渡したかったのだが…流石に間に合わなくてな」


 勉強の息抜きにと作ってはいたものの、納得できるチョコにはならず、結局ホワイトデーまで引っ張ってしまっていたのだ。


「……今食べても?」


「あぁもちろん。良ければ味の感想を教えてくれ。これからは毎年作るんだから」


 作ってきたのは一口サイズの生チョコ。零央はこういう簡単につまめるのが好きだ。数があるとなお良し。


「じゃあお言葉に甘えて……」


「…………どうだ?」


 容器から1つ取り出し、丁寧に口に運ぶ。しっかりと味付けはしたし、何度も味見もした。それなのに料理を食べて貰うのは毎回胸が高鳴ってしまう。もしかしたらなんて考えてしまうものだ。


「ん。相変わらずうまい」


「そうか……ありがとう」


 そんな私の不安を振り払うように零央は無垢な笑顔でそう言ってくれた。毎回言ってくれる言葉ではあるが、何回言われても嬉しいものは嬉しい。


「……なぁ。少し苦くなかったか?君は甘い方が好き………だよな?」


 とはいえ今回ばかりは不安は消えなかった。理由は零央の好みとは少し違う味にわざとしたからだ。私はらしくないことをしてるとは分かりつつもこれからすることの前フリの為に零央に確認することにした。


「……確かにビターな味だったけどチョコなんてそんなもんじゃ――」


 どうしてそんな質問をするのだろうと不思議そうな零央から味の感想を引き出す。そんな零央に不意打ちする為に私は顔を近づけ、言葉を遮るようにキスをした。


「…っう…………甘い…か?」


 とても恥ずかしいことをしてるのは充分に理解している。キスをする口実にわざわざビターチョコを作ってきて、あんなあからさまな前フリまでした。1年前の私が聞いたら理解できずに固まってしまうだろう。


「…………ちょっと甘すぎるかも」


 突然のキスに零央は戸惑いながらも頬を赤くし、そんな冗談を言ってきた。私も久しぶりの零央とのキスでほどよく緊張も溶けてきた。やっぱりキスは良いものだ。とても安心できる。


「ふふっ……甘いのは好きだろ?」


「……ありがとう。大好きだよ」


「こちらこそありがとう。私も大好きだ」


 こっ恥ずかしい愛の言葉を交わしながら私達の肉体は徐々に近づいていっていた。指同士はとっくに絡み合い、体が疼き始めていた。すっかり変えられてしまったものだ。


「なぁ…もうちょい食べたい」


 いじらしい顔でそうねだってくる零央。私はそんなワガママで強欲な彼氏の為に作ってきたチョコを指で掴み、唇へと押し当てた。


「まったく………ほら好きなだけ食べるといい。まだいっぱいあるからな」


 そのまま私は零央に向き合う形で膝の上に座り、より体を密着させた。他の皆にこんなことしてるなんて知られたら文句を言われるかもしれない。終わった後で「なんて恥ずかしいことを……」と後悔するのも分かってる。私らしくないかもしれない。



「いっぱい食べてくれよ。零央」



 だとしても、今は何も考えずにこの関係に溺れていたい。だってこんなにも愛し、愛されているのだから。






 ――――――



 どうもHaluです。


 突然のバレンタイン編が始まり、そして終わりました。


 最近書けていなかったのでリハビリも兼ねてましたが、久しぶりに話を書いてみると楽しいのなんの。


 栞編だけは少し特殊で、バレンタインボイスの台本を小説用にしたやつです。まだ聞いてない人は是非是非。



 ではまた。

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