第44話 オッサン齢53歳にして恨まれる。
「じゃあ、新しいバイト募集してくるっす」
「あ、募集するなら1人多くしてくれないかな?
俺はシールド装備で行った方が良いと思うんだ」
「了解っす」
「それと、まだ時間有りそうだから、もう少し下まで潜って良いか?」
「あー多分次は動物エリアなんすよ、ただ、デカい虫出て来たら、1回戻って欲しいっす。
害虫エリアって呼ばれてるんすけど、病気持ち多いんで抗生剤飲まないと侵入禁止なんで」
「わかった、虫って事は出て来たら儲からないって事か?」
「ボスがレインボースカラベだと大当たりっす。
レアドロップが虹玉って言うんすけど、1個200万くらいで買い取りっすよ」
「じゃあ、ちょっと見てくるよ、千紗、みー行くよ」
「はーい」
2人(?)に声をかけてプレートに進む。
「あのー俺たちも付いていって良いですか?」
今回クビにならなかったオッサン2人が声をかけて来た。
「来ても良いけど、虫だったら戦闘しないで戻ってくるよ」
「その時は仕方がないって割り切りますので、大丈夫です」
「2人はストライキに加わらなかったんだね」
「まぁ、俺たちは社会経験一応あるんで、あいつらの言ってる事がかなり自分よがりだなって思ったんで」
「うちもそこまで酷い扱いしてないと思うんだけど、なんでああなっちゃたのかなぁ」
「今回扇動したのは、あの中で仕切ってた2人なんですけど、余りにも簡単にボスを倒すので勘違いしちゃったんだと思いますよ」
「勘違い?」
「失礼ですけど、剣崎さんって全然強そうじゃないですか、それにアイテムのおかげでボス倒せてるって言うし、ボス戦でもみーちゃんですか、あの子の能力で無力化してから戦うから」
「俺が弱いって思ったって事?」
「はい、いざとなったら、アイテム強奪すれば自分たちだけでボス倒せるって思ったみたいですよ」
「えーでも、強奪出来るほどみんな強く無いと思うんだけど」
「怒らないでくださいね、あいつらが言ってたんですからね」
「うん大丈夫」
「協会の男はヘラヘラしてて大した実力ない、千紗って女も魔法はできるが索敵メインで戦闘力ない、剣崎さんもアイテム頼みで全然弱いから、脅せばなんとでもなるって言ってたんですよ」
「それをみんな信じてしまったと」
「そうですねぇ」
「レベル差でも結構なもんになると思うんだけど」
「自分達と同じ適正レベル以下でどんどん下に降りてる人って思ってたみたいですよ」
「なんていうか、自分たちの都合の良いように勝手に想像してた感じだな」
「そうですね、元々の理由もあんなに稼げるならもっと俺たちも分け前貰って良いはずだって理由ですしね」
「それに関してはすまないと思ってるんだが、どうにも出来ない部分でもああるんだが」
「いえいえ、そもそも俺たちは周りから見捨てられた探索者なんですよ、それを30までレベルを引き上げてくれるっていうのは、地獄に降りてきた蜘蛛の糸なんです。
それを欲に目が眩んで自分達でその糸を切ってしまったんです。
30までレベルが上がれば、充分返済しながら生活出来るようになるのに」
そんな話をしながら、46階まで降りてきた。
「…虫だね」
1mくらいのサイズの蚊が飛んでいた。
「虫ですね」
オッサンが少し残念そうに相槌を打つ。
「よし!撤退!」
「虫だけに無視ですね」
千紗め、まだ覚えていたのか。
顔がニヤニヤしてる。
「虫だった」
1階に戻って笹かまに報告する。
「あー、薬の手配もするっす、こりゃどっちみち今日はこれ以上の探索無理っすね」
「そうだな、よし!解散!」
「帰っちゃダメっすよ、あいつら回収しないとならないんで」
「それって、笹かまがするんじゃなくて?」
「クエストっす、遭難者の救助お願いっす。
報酬は1人100万っす」
笹かまがヘラヘラ笑う。
「………あーそういう事ね!」
「そうっすよ!稼げるとこで稼いでおいた方が良いっす」
「じゃあ、そのクエスト受けるよ」
「2時間くらいの休憩したら、行くっす」
「ん、分かった」
ー2時間後ー
再び45階。
「帰りたい人は救難申請出すっすよー」
笹かまが極度の緊張で死にそうな顔してる人達に呼びかけてた。
ボスが現れる場所の周辺は他のモンスターがより付かないので安全地帯のようなもんだが、やはり襲われれば確実に死ぬという環境は精神的な疲労が相当きつかったらしい。
「はい、全員遭難救助するっすねー」
しばらく待って、俺がボスを倒す。
今度はちゃんと全員5m以内に居たが、肝心の装備をさせていないのでやっぱりドロップしない。
持ってきて装備させると、契約上ややこしくなるのかな?
無事1階に戻ってきた。
ここで解散になる。
今回の募集した人たちは1階のダンジョンの中に仮設テントをはって、そこで寝泊まりしてる。
契約自体は解除されたが、そのテントの使用契約は別になっているそうで、テントだけはまだ使用出来る。
なので、今回のメンバーもテントへと戻って行くのだが。
「今に見てろよ、絶対復讐してやる」
背中越しに誰かがそう呟いた。
パッと後ろを振り向いたが、誰が言ったのかわからない。
一抹の不安を抱えながら、今日の探索を終える。
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