2章

第45話 幕間ーリィトの思い出ー


 思えば、作業ゲーのような異世界生活だった。


 対魔百年戦争、という厨二病感満載のネーミングの戦争とは裏腹に、心躍るアドベンチャーパートもなければ、どんどん世界観が広がっていく成長パートもなかった。

「あれ、キツかったなぁ」

 前世で過労死して異世界に転生したとなれば、当然、胸躍るファンタジックな日々を期待するだろう。

 異世界転生とファンタジックな日々と、あとついでにチートは、ハンバーガーとフライドポテトとコークのような、ハッピーな蜜月関係にある。

 そう、たしかにリィトは、チート級の強さを手に入れていた。

 モンスターもハントしまくったし、英雄と呼ばれ、宮廷魔導師という地位も手に入れた。

 だが、それが胸躍るファンタジックな日々だったかというと──答えは、ノーだ。

 『植物魔導』の適性を、エキセントリックな師匠にしごきあげられながら鍛える日々のなかで、たしかにリィトは強くなった。

 ロマンシア帝国の魔獣狩りの職人集団である冒険者ギルドでは最年少の天才魔導師として、地下迷宮ダンジョンから湧き出てくるモンスターを屠っていった。

 その腕を買われ、正体を明かさないことを条件に帝国軍の魔導師としてモンスター討伐およびダンジョン攻略の最前線に立つことになって、わずか半年でついた二つ名は──『侵略の魔導師』。

 たまに、植物魔導の実験がてら飢えに苦しむ人々を救ったときには『施しの聖者』なんていう御利益のありそうな名で呼ばれたりもした。

 だが、その実態は、廃人仕様のレベリングと、高難易度レイド戦のくりかえし──オープンワールド系のゲームの邪悪なところの煮こごりのような異世界生活だったと、今になってみれば思う。


 ロマンシア帝国を追放され、ただのリィト・リカルトとなり。

 ──トーゲン村という、拠点を手に入れた今となっては。

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