逆襲だ!



「まずはルークの解放だ。それからウィリアムとともにブライスどもを捕まえる」

 なるほど!


「あの……。ルイーズさまは」

「……地下牢だ」


 マジで? まさかとは思ったけれど。

 それじゃあ、まるで犯罪者だ。


「は、はやくお助けしないと」

 声が震えた。

「うん」

 ヘンリー卿はしばらく首をひねったが「ルイーズ嬢が先か?」とつぶやいた。

 攻略の順番はあると思うけれど、わたし個人としては今すぐにでもルイーズさまを出してあげたい。

 だって、地下牢なんて令嬢が入るところじゃない。しかも無実なのに!


 それに、メアリさまが。


「……メアリか」

 ヘンリー卿がむずかしい顔をした。

「メアリさまが言ったんです。ルイーズさまの命令でが毒を仕込んだと」

 ヘンリー卿は腕組みをすると、考え込むように首をひねった。

「嘘ですよね。きっとそう言うように脅されているんですよ」

「……メアリのことは、後でいい」

 ごまかしましたね。なにかご存じですか。


「うん、そうだな。ルイーズ嬢を先にしよう。じゃないとウィリアムも納得しないだろう」

 ……そうですね。

 ちょっといろいろ気になるけど、助けるのは早い方がいい。

「では、ルーク、ルイーズ嬢、ウィリアムの順番だ」

「はいっ」

 とってもいいお返事ができた。

「見張りを倒してくるから、きみはここで待ってて」


 ヘンリー卿は返事を待たずに飛び出していった。え? 素手ですけど。


 えいっ! やあっ! とおっ!!

 そんな感じで瞬殺だった。

 え? いまなにをした?


 走って向かったヘンリー卿の前に立ちふさがった見張りの手を払うと、みぞおちに一発。

 続いて殴りかかって来たふたりめをしゃがんでかわすと、つんのめった相手の襟首をつかんでから、腹にひざげり。

 ふたりとも「ぐへぇ」とみっともないうめき声を上げてうずくまってしまった。


「なにをしている!」

 異変に気づいて廊下の向こうから走って来た別のふたりは、背負い投げとハイキックで吹きとばした。

 すごーい! 長い足がみごとに後頭部を直撃だ!


 やだー! なにこれ! カッコいい!


 あっという間に、全員をのしてしまった。

「おまたせ」

 息のひとつも切らせずにわたしに向かってにっこりと笑った。

「す、すごいですーーー。カッコいいですーーー。教えてくださいーーー」

 胸のところでぱちぱちと小さく拍手をした。

 こんなことを臆面もなく言えるのは、おばちゃんゆえの図太さのなせる業だな!


 ヘンリー卿もちょっとだけ照れている。それもまたよし!

「ご令嬢がやることじゃないよ」

「でも、あれができたらお嬢さまをお守りできますよ」

「きみは護衛の仕事を取るのかい」

「ええー。やってみたいなーー」

 しゅしゅっ、とシャドウボクシングのマネをしてみる。

 ヘンリー卿はくすりと笑った。

「さあ、行くよ!」

 うん、そうだね。いまはそっちが大事でした。


 見張りの衛兵を、えいっ! やあっ! とおっ!! っとやっつけて。

 コンコンコン。

 ルーク殿下の執務室の扉をたたく。返事を待たずに扉を開けると背中を押された。続いてヘンリー卿が入って来た。


「おや、ジョージもいっしょだったか」

 ヘンリー卿はたいして驚きもせずに言った。ふたりとも、外の物音に身構えていたのか、立ったままだった。

「おう、ヘンリーだったか。こんなの窓を伝えばすぐさ。となりだもん」

 いつものようにヘラヘラとジョージ・クラークは言った。


 窓を伝って? ここは三階ですが、そんな器用なことができるんですか。ヘラヘラしてるのに。

 王子の従者を任されるくらいだから優秀なんだろうけど、そうは見えない残念なヤツだ。


「アメリア! そのほほどうした?」

 やっぱり目だちますか。

「ジェームズのやつにやられたんだ」

 なんでヘンリー卿が答えますか。

「なに? ジェームズが?」

 ルーク殿下はぎゅと眉を寄せた。


「それよりも、シャーロットお嬢さまの危機です!」

「なにい!」

 ルーク殿下は掴みかからんばかりだ。

「シャーロットがどうした!」

「今、エバンス侯といっしょに二階に軟禁されています。ジェームズにくどかれています!」

 殿下はちっと舌打ちをした。

「くそう! あのヤロー、ゆるさん!」

 王子さまも舌打ちするんですね。


「国王陛下と王太子殿下が亡くなって、ルーク殿下は死罪になるとブライス公が言いました。それでジェームズ殿下が国王になると。シャーロットお嬢さまを王妃にするって言いやがるんです、ジェームズのヤロー」

「なにい!」

 ルーク殿下は「ぶちのめしてやる!」とこぶしを突き上げた。


「わかった、わかったから」

 ヘンリー卿がなだめる。それからおおまかにこれまでの経緯とこれからの計画を話して聞かせた。

「兄上が無事でよかった」

 事情も分からないままに監禁されてしまったルーク殿下とジョージ・クラークはともあれ胸をなでおろした。


「うん、ではルイーズ嬢を助けに行こう」

 ルーク殿下が先陣を切る。


 わたしたちは殿下に続いて廊下に出た。


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