第9話 Mエク。


 私は今、第三者目線で自らが出演するMエクを楽屋で見ている。

 本当に妙な気分だ。

 画面の中の私は、確かに私の声で歌っていて。


 かつて白崎さんが死んだ未来では、私は出演しなかったと思うから、SF作品でよく話題になる所謂いわゆる「過去改変」になってたりはしないかが少し心配だけど。


 今の私が依頼して作った曲に乗せた蛙私の書いた歌詞。

 いい曲だと素直に思えて、蛙だけど涙でた。

 頑張れー、レオン

 だけど、確かに、中身が「白崎麗音」ならこのパフォーマンスは当然なのかもしれない。


 そして、本日のトリはやっぱり本物の「白崎麗音」!


 はあぁ。

 最高の歌声でした。


 この神声、絶対に失うわけにはいかない……!

 それに、顔面も強い……背も高い……

 ハァハァ……


 ところが分からなかったのだが、この時既にレオンの体が消え始めていたのだ……


 番組終了後、私たちは予定通り白崎麗音の後を追う。

 何故か今日に限って白崎さんはマネージャーも付けずに1人で行動していた。

 そのお陰で、私達も難なく後を追うことができた。


 するとこの男、人気の無い路地に入ってくではないか。

 何してるのこの人ー。

 自分が有名人だという自覚はあるのかしら?

 それとも、護身術に自信あり過ぎなの!?

 急ぎつつも気づかれないよう細心の注意で尾行する。

 もちろんレオンが。

 そして、私の場所は頭の上だ。





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