二十九 スペースバザールのジュディー

 グリーゼ歴 二八一五年、十一月十日。

 オリオン渦状腕深淵部、グリーズ星系、主惑星グリーゼ、北半球北部。

 グリーゼ国家連邦共和国、ノラッド、スペースバザール。



 上空を衝撃波と爆音が飛ぶ。スペースバザールの構造材と隔壁は強固だ。外部の騒音はおろか、スペースファイター〈⊿3〉が落下しても、傷さえつかないだろう。なぜなら、スペースバザール自体が、アクチノン艦隊の巨大な攻撃用球体型宇宙戦艦の一部だ。


「ジュディー。そろそろ帰るわよ」

 最上階のゲームセンターで、ジュディーの母ケイトがシューターのキャノピー越しにコクピットを覗きこんでいる。

「もうちょっと、まってね。すぐ、終るから・・・」

 コクピットのジュディーはディスプレイを見つめた。砂漠の町のモスクに、戦闘員が集まっている。ケイトもディスプレイを見た。

「ゲームしてるんじゃないのね」

「うん。この戦闘員の女の人、ジニーっていうんだよ。

 デロス星系の攻撃からグリーズ星系を守って、デロスの悪将軍のルペソを惑星ナブールの砂漠の町へ追いつめたんだよ。

 これから、将軍との戦闘がはじまるんだよ」

「じゃあ、ジュディーが戦闘員になって、シューターから戦うの?」

「戦わないよ。だって新しいゲームの予告なんだよ。武器とか、兵力とか、敵と味方の政治や経済状態を説明してるんだよ」

「勢力って、敵と味方の二つだけ?」

「いろんな勢力があるみたい・・・。

 ジニーは大変だよ・・・」

 ジュディーは惑星ナブールの勢力図を見ている。


「ウワァッ!」

 ジュディーの目の前で、ディスプレイが3D映像に変った。

 なんなのこのシューター?

「ウワァォッ!」

 こんどは3D映像内で、サッカーボールほどの球体マシンが4D映像を投影した。

 3D映像の中でジニーが、球体マシンの投影する4D映像を見て叫んでいる。

「なんなの?やっと、ルペソ将軍を発見したんだよ!」

 

 このシューター、別の世界を映してるんだ!

 ジュディーは3D映像を食い入るように見つめた・・・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る