第17話 二人の護衛
「本当に申し訳ありませんでした!!」
ガムとジムはアオイ達の部屋へ連れて行かれ、拘束を解かれて正座させられていた。ちなみに二人の目はアオイがヒーリングで治していた。
「どちらから死にたいですか?」
ヒスイが矢切を抜き、ガムに突きつけた。
「アオイさ…、アオイの裸を見ようなんて死に値します。」
「ちょっとヒスイ、その物騒なものをしまってよ。」
「だけど…。」
「君達、反省してる?」
ガムとジムはコクコクと首を何度も上下させた。
「よし、選択肢を与えてあげよう。死ぬか、下僕になるか。」
「アオイ、生ぬるくないですか?じわじわと痛ぶられながら死ぬか、死にたくなるくらいの苦痛に苛まれる下僕か?どちらか選びなさい!」
ガムとジムは震え上がった。この髪の長いお姉さん(ヒスイ)の目が本気だったからである。
「お、お助けください。出来心だったんです。」
「そ、そうです。出来心だったんです。」
「そうね。じゃあこうしよう。君達は今日から私達の下僕だ。ガム、君には魔素の使い方を教えるので習得して。ジム、君はヒスイに教わって魔道具の勉強をして。ヒスイの助手が務まるくらいになってもらう。期間は1週間。私の期待値に達しなかった場合、嬲り殺します。」
「そ、それはどういうことでしょうか?」
「質問は許しません。とりあえず2人は商隊の隊長さんに私達の商隊への同行を認めてもらって来て。はい、駆け足!」
ガムとジムは訳がわからないまま、宿の食堂へ駆け降りていった。
「アオイ、今のはどういうんです?」
「ああ。噂通りなら賊が出ているらしい。あの2人が護衛なら商隊は全滅しそうだからね。ガムは風の使い手だ。集団戦で風の使い手の有無は戦局を大きく左右する。だから商隊を守れるくらいになるように鍛える。」
「…」
「問題はジムの方だ。これから私達は大森林で竜の魔装を受け取る。だけど竜の魔装は修理が必要なんだ。」
「竜の魔装って名も無き魔法戦士が身に着けていた鎧ですよね。壊れているということですか?」
「そう。私が壊しちゃったからね。」
「…ど、どういうこと??」
「と、ともかく竜の魔装の修理には地と闇の使い手が必要なんだ。だからヒスイに頼るしかない。」
「ジンライ様の傑作を私が修理!!」
「できなくないはずなんだ。ヒスイくらい地の魔法を使えれば。ヒスイはゴーレムを作れるよね?」
「はい、自立式は無理ですが、コントロール式のゴーレムであれば得意です。マーズ領に私の自作ゴーレムが3体います。」
得意気なヒスイにアオイは言った。
「結構強いでしょ。」
「はい、自慢じゃありませんが強いです。」
「うん、ゴーレムは魔素だけで動かすよりも闇魔法を介在させた方が動きが良いんだ。闇魔法は重力を操れるからね。
ヒスイは無意識にゴーレムへ闇魔法を組み込んでいたんじゃないかな。竜の魔装はゴーレムが発展したものと思ってもらうと近いかもしれない。
竜の魔装は高重量、高硬度、高対魔素性のレアメタルに重力操作を組み込んだ鎧なんだ。並の地の使い手だと歯が立たない素材に闇の魔素による重力操作。だから修理が難しかった。
今、修理が可能な人材を私はヒスイしか思い浮かばない。」
「わかりました。で、ジムはどういうんです?」
「あの子、剣術は未熟みたいだから戦闘には向かないけど、魔法は強力だった。
ドアを閉じていた地の魔法はちょっとすごかったよ。私も解呪に結構な魔素を使った。それでね。あの子を仕込んでヒスイの助手にできないかな?」
ジンライの傑作である竜の魔装。それを修理するのにたくみな地の使い手の手助けがあれば心強い。しかし、あの子で良いのか?という思いがヒスイにはあった。
「アオイはなぜあの子が私の助手に相応しいと思ったのです?」
「あいつ、ジンライに似てるんだ。」
「どういうことですか?」
「あ、顔とか、性格じゃないよ。魔素の使い方がね、ジンライに似てるんだ。普通、地の使い手は物質を魔素で覆うだろ?」
「はい、それ以外の方法が私には思いつきません。」
「ジンライは魔素を物質に練り込むんだ。」
「本当ですか?本当にそんなことができるんですか?」
「ジンライはやっていた。あの子、ジムもね。あ、ジムの魔法は到底ジンライには及ばないよ。
でもジムは魔素を物質に練り込むイメージができている。もしかしたらヒスイに良い影響があるんじゃないかと思ってね。実際ジンライはゴーレムを使う時、事前にゴーレムを組み立てて用意することはなかった。必要な時に地の魔素を込めて石から"練り上げて"いたよ。」
ヒスイは心内で感動していた。
(魔素を物質に練り込むことができたら、魔法の幅を劇的に広げることができる!
鉄であれ、石であれ形を自在に変えることができる。ジンライ様は石に魔素を練り込んでその場でゴーレムを作り出していたんだ!画期的な魔素の使い方じゃないか!)
「わかりました。私もジムと一緒に学びます。」
ヒスイはグッと矢切を握り締めていた。
「アオイ、ありがとうございます。私、自分でこれ以上の成長は難しいとあきらめていたんです。このままではアオイの力になれないかもしれないと悩んでいたんです。
でも、アオイから闇の魔素の使い方や地の魔素の使い方のヒントをもらえただけなのに成長の糸口を掴めたような気がします。」
「いや、私もジンライの地の魔素の使い方を教えただけで魔素を物質に練り込む方法を教えられる訳じゃないからね。」
ヒスイはアオイや闇の剣士の力量を目の当たりにし、そして魔大陸の結界の解放という大きな使命を前に自分の力に自信を持てなくなっていた。でも、
(私はアオイの役に立ちたい。だから力が欲しい。)
「私は力がほしいです。アオイのそばにいても許されるくらいの力が。」
(じゃないとアオイを支えるどころか、私の宿命も乗り越えられない…。)
「ヒスイ、言ってくれたよね。私の苦悩を半分もらってくれるって。嬉しかったんだ。ヒスイとならどんなに辛いことも乗り切れると思った。
でもね、ヒスイが辛いことも乗り切れないとダメなんだ。ヒスイの苦悩も半分、私がもらう。」
「アオイ、ありがとう。私、頑張るから…。」
アオイはそっとヒスイの肩を抱きよせた。
「それじゃあ、食堂に行って商隊の隊長さんに挨拶してこようか。」
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お読みいただきありがとうございます!アオイとヒスイをこれからもよろしくお願いします。
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