オリオン共和国の総統J までの出来事
渦巻銀河ガリアナには多くの星系がある。支配している生命体の多くがヒューマノイドだとしても哺乳類とは限らない。オリオン渦状腕ヘリオス星系は小惑星の飛来によって哺乳類が進化したが、他星系では獣脚類がヒューマノイドに収斂進化した場合もある・・・。
太古の昔。
渦巻銀河メシウスのアマラス星系惑星ロシモントから、精神生命体ニオブを乗せ、大司令戦艦〈ガヴィオン〉を旗艦とするへリオス艦隊と、他に四艦隊が、この渦巻銀河ガリアナへ発進した。四艦隊のひとつアクチノン艦隊がグリーズ星系主惑星グリーゼに飛来し、へリオス艦隊がヘリオス星系惑星ガイアに飛来した。
その後、惑星ガイアに飛来したへリオス艦隊の精神生命体ニオブは、艦隊本隊を衛星ディアナの地下に格納して、惑星アーズに突撃攻撃艦〈フォークナ〉三隻とプロミドン(PD)一基を残し、人類と精神共棲した。
PDは、渦巻銀河メシウスのアマラス星系、惑星ロシモントに居住していたニオブ(精神生命体になる以前のニオブ)が開発した人工知能で、物質をエネルギー転換する機能や時空間移動させる機能などを有している。
ガイア歴、二十一世紀初頭。
精神生命体ニオブが精神共棲した人類と、ニオブが配偶者として認めた人類の間に、新人類トムソが誕生した。
ガイア歴、二十一世紀初頭にヒトゲノムDNAが解読されると、地球国家連邦統合政府は民主主義の理念に基づき、遺伝子情報は厳然たる事実で全人類のものであるとし、遺伝子によるあらゆる技術を全人類共通の資産として扱った。
そして、全人類がヒトゲノム遺伝子の完全解読結果を共有するため、保健省に優性保護局を設立し、ヒトゲノムの遺伝子完全解読計画を実行させた。
優性保護局は、ゲノム遺伝子解読専門機関として優性保護財団を設立し、遺伝子解読を開始した。
優性保護財団の総裁に就任したホイヘンスは、新人類トムソが急速に身体組織を再生する、特殊な遺伝子を持っているのに気づき、トムソを使って違法に移植臓器を培養し、地球国家連邦統合政府要人に移植臓器供与して政治に介入しようとした。
地球国家連邦共和国議会対策評議会は、ホイヘンスを水面下で潰そうと画策し、地球防衛軍を派遣するが、ホイヘンスは宇宙戦艦〈ホイヘンス〉を旗艦とするホイヘンス艦隊を建造して太陽系の外へ逃亡した。
対策評議会は議案提出超越権を行使し、ホイヘンスに地球国家連邦統合政府反逆罪と医療反逆罪、逃亡罪を科し、地球国家連邦統合議会を通じて、検察警察機構、軍事機構、一般市民に、第一級重罪犯ホイヘンスの逮捕権を与えた。
その後、検察警察機構と軍事機構の逮捕権は、ホイヘンスの身体形態を問わない、特別逮捕権に変った。
単なる第一級重罪犯なら、逮捕と同時に特殊カプセルに隔離幽閉され、生かされたまま、その存在は現実世界から消滅する。だが、身体形態を問わぬ逮捕は、抹殺や分子レベルの分解を意味する。
ガイア歴 二〇八〇年十一月。
渦巻銀河ガリアナオリオン渦状腕、ヘリオス星系惑星ガイア(地球)、惑星ガイア。
カムトたち地球防衛軍のティカル駐留軍(トムソと呼ばれる新人類。精神生命体ニオブが精神共棲した人類の子孫のニオブ)は、へリオス艦隊が残した火星の突撃攻撃艦〈フォークナ〉三隻とPDを回収し、ホイヘンスの艦隊が、この渦巻銀河ガリアナのオリオン渦状腕深淵部、グリーズ星系へ亜空間スキップ(亜空間転移)したのを知った。転送したのは火星のPDだ。PDの探査によれば、グリーズ星系のネオテニーはアクチノン艦隊で飛来したニオブの精神共棲体の子孫である。
その後、地球連邦統合政府(地球連邦統合政府議会対策評議会)は、ホイヘンスだけでなく、ホイヘンス艦隊に乗艦している元優生保護財団警備員とその家族二百名についても、ホイヘンス同様、身体形態を問わない特別逮捕権を検察警察機構と軍事機構に与えた。
ホイヘンスを壊滅するべく、カムトたちは、グリーズ星系主惑星グリーゼへ、時空間スキップ(時空間転移)する計画を進めた。
すでにグリーズ星系主惑星グリーゼには、惑星ガイアのPD(PDガヴィオン)によって、カムトの伯母耀子・J(ジェニファー)と耀子の両親でカムトの祖父母、省吾・D(デイヴィッド)と理恵・K(キャサリン)が〈ホイヘンス〉を追って時空間スキッしていたが、ホイヘンスはJたちの捕獲消却戦略の目を潜り抜けてふたたび他星系へ逃亡した。
グリーゼ歴 二八一五年、十一月十日。
オリオン渦状腕深淵部、グリーズ星系、主惑星グリーゼ、北半球北部。
グリーゼ国家連邦共和国、ノラッド、カンパニー、地下五階、研究ユニット。
「なんなの?やっと、ルペソ将軍を発見したんだよ!」
カンパニーの研究ユニットで、ルペソ将軍を追ってスキップ(時空間転移)したJが、4D映像を通じてこっちを見ている。
あたしの時間感覚で、Jは半月前までは確か一歳だった。そして昨日までは九歳だった。そして今は十五歳だ・・・・。スキップ(時空間転移)の影響だ・・・。
そう思いながらLが4D映像のJに言う。
「4D映像が乱れやすいんだ。一ヶ所にいて欲しいんさ。
今日は、やっと、見つけた・・・。
ジェレミが永久幽閉の刑になったさ。恩赦は無しだ。
精神と意識を石板に幽閉されて、共和国議会議事堂前の広場に敷設され、国民に踏みつけられるべ。永久に・・・。石板が精神ヒッグス場の役目をしてるべ。石板が割れれば、その時、精神と意識は消滅するべさ・・・」
『この宇宙に、アーク・ルキエフのシンパ、ホイヘンスのネオロイドが存在する限り、あたしたちが宇宙へ侵攻する理由も存在する』
Jは、そう考えてるんだろう・・・。
「了解。こっちは、ルペソ将軍を発見したよ!
ルペソは、ここで武装勢力を指揮してるんだ。この惑星を掌握しようとしてる。
ルペソをここから排除するのに、兵器が足らないんだよ・・・」
銃弾が飛びかう音がしてモスクの壁が破壊し、瓦礫がJの頭上に降ってきた。遅れて銃声が響いた。
「狙撃してきた!急いで、兵器を送ってね!」
「どこだ。そこは?」
「ここは・・・星系の、惑星ナブール・・・」
二発目の銃弾の衝撃波とともに、Jが仰け反ったまま吹き飛んだ。
同時に、4D映像が乱れて消えた。
「ジェニファー!J!」
一瞬にLの顔から血の気が引いた。鼓動がいっきに高鳴った。
くそっ!撃たれたぞ!シールドしてなかったんか?4D映像が乱れるなんて、PePeも撃たれたんだ・・・。もしそうなら、シールドは効かねえベ・・・。何とかしなきゃなんねえ。どうする。おちつけ・・・。
なんてこった!ルペソのテクノロジーがあたしたちより上だってか?そんな事はあり得えねえべ・・・。
「PD!ジェニファーは生きてるんか!?」
Lは、研究ユニットの空間に現れた執事風のPDのアバターに叫んだ。
PDはダークマターのヒッグス場に存在する宇宙意識であり、電子機器や機械を媒介にして我々の時空間に存在している電脳宇宙意識だ。今現れているPDは、戦艦〈アクチノン〉をコントロールする巨大電脳意識プロミドン・PDアクチノンの、略称だ。ここノラッドのカンパニー自体が、巨大な攻撃用球体型宇宙戦艦〈アクチノン〉だ。
「だいじょうぶです。生きています。PePe(PDサブユニットの機械生命体)がいっしょです。安心してください。しかし、状況は不明です」
「本当か?状況がわかんねえのに、安心してていいんか?」
「ほんとうです。PePeが居る限り安全です。PePeの位置は、5D座標に現れています」
ふぅ~と溜息が漏れた。Lの顔から笑みがこぼれている。
Jがスキップしても、PePeが居る限り安全か・・・。
こっちに居た時よりJは成長したな。と言う事は、他の時空間へスキップしたって事か?
さて・・・、
「PD。兵器を調達しなくちゃなんねえ。JとDとKはどこに居る?」
「DとKのPePeたちの位置も、5D座標に現れています。
Jの救援と、ルペソ将軍の排除に、トムソの特殊部隊を時空間スキップしましょう」
「そんな部隊、グリーゼに居ねえぞ」
LはPDの考えを読みとれない。
「ヘリオス星系惑星ガイアのニオブの部隊です」
「連絡できるんか?」
「私はガイアのプロミドン、PDガヴィオンにもシンクロしています。
素粒子信号時空間転移伝播通信は可能です。
PDガヴィオンに、トムソの部隊の出動を要請しましょう。
ニオブによる、私マスタープロミドンの正式名は、PDアクチノンです」
「わかったさ。今は、説明なんかいいべさ。早いとこ連絡しとくれ」
「了解です」
PDアクチノンはヘリオス星系惑星ガイアの時空間へ、トムソの特殊部隊出動要請を素粒子信号時空間転移伝播させた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます