第31話激闘③

「はやく皆を退避させるのじゃ!」


ラプロスの声に従い、警察が動く。


野次馬、報道、全ての人々をこの場から排除させる。


中には、報道の自由とか叫ぶ輩もいたが、この者を残せば被害が広まる可能性もあった。


その為、抵抗する際、少しでも、警察官に触れれば、公務執行妨害で連行した。


そのおかげもあり、現在、この場にいるのは、周りを固めた警察官とラプロスのみ。


「うむ、これで迷いなく力を発揮できるようになった」


「なにを・・・元魔王といえど、この人数あいてに、何処まで戦えますかな?」


デルモントの言葉に、ラプロスが笑みを浮かべる。


「たしかに、四方に散られては、わらわも苦労する・・・

 だが、誰がわらわ一人で戦うと申したか?」


「なぬ!」


このタイミングで、一台のパトカーが到着した。


そして、中から現れたのは、グリッチとピオーネだった。


もう、ラプロスの手により処分されていたと思われた二人の登場に

デルモントの表情が強張る。


「お、おまえたち・・・・・裏切ったのか!!!」


「あら、デルモント様、お久しぶりです。


 でも、久々の再開で、そんな暴言を受けるとは、思ってもみませんでしたわ」


「きさま・・・こんなことをして、ただで済むと思っているのか!

 召喚の命令にも背き、ましてや、

 追放させた魔王につくとは、万死に値するぞ!」


「どうぞ、お好きに。


 ですが、以前のあたしとは違いますわよ!」


ピオーネが、はっきりと抵抗の意思を見せると

その後ろにいたグリッチが笑い声をあげる。


「ヒヒヒ・・・見事だぜ。


 俺もこの世界、気に入っているんでな。

 好き勝手なことは、させないぜ」


「二人揃って・・・・・ならば、貴様らも魔王ともども

 この場で屠ってやる!」


その言葉を号令に、デルモント配下の魔族たちが暴れだす。


「ピオーネ、グリッチ、よいか、一人としてこの場から逃がすでないぞ」


「「はい!」」


襲い掛かる魔族に対して、ピオーネが攻撃を仕掛ける。


「あたしの本気、見せて差し上げるわ」


襲い来る三体の獣魔族。


それらに向けて、チャームを放った。


勇者の塊を食べ、魔力が増大したピオーネのチャームの前に

三人は、呆気なく堕ちた。


動きを止める三人に対し、命令する。


「あの魔族たちを倒しなさい!」


命令に従い、方向を変えた三人の獣魔族たちが、仲間の魔族に襲い掛かる。


時には殴りつけ、時には嚙みちぎり、仲間の魔族たちを死地に追いやる獣魔族たちだったが、突然、動きを止めた。


そして、崩れ落ちた。


「これだから、野蛮で、下級な獣風情は、嫌なんですよ」


そう言いながら姿を見せたのは、

燕尾のような黒服を待った悪魔族の一人、【デルシャス】だった。


「チャームしか能のないサキュバスごときに遅れを取るとは、

 デルモント様の名に傷がついてしまいます。


 なので、あなたを処分し、なかったことに致しましょう」


「だったら、あたしのチャーム。


 その身で受けてみな!」


ピオーネは、渾身のチャームを放ったが、デルシャスは、そのチャームを

簡単に、受け流した。


「無駄ですよ。

 

 では、私の番です」


デルシャスが軽く腕を振るうと、鞭のようなものが飛び出し、

ピオーネに襲い掛かった。


「受けても無駄、躱すことなど不可能ですよ」


この技こそが、先ほど、三人の獣魔族を屠った技なのだ。


危機一髪かと思われたが、その鞭のような攻撃は、ピオーネには届かなかった。


「おい、おい、悪魔の攻撃なんて、見慣れているんだぜ」


攻撃を止めたのは、グリッチだった。


「グリッチ、貴様・・・」


「同じ悪魔族、それも久しぶりの再開なんだなんだ、そう、カリカリするなって」


「わ、私は、貴様のそのようなチャラチャラしたところが、以前より嫌いだ!


 チャラチャラしているくせに、この私を差し置いて、毎回、毎回・・・・・


 まぁいい・・・この機会に貴様を屠り、私が上だということを証明してやる!」


一気に距離を詰めるデルシャス。


 だが、グリッチに焦りはない。


「単純な奴だ」


 グリッチが取り出したのは、拳銃。


その銃口を、デルシャスに向け放つ。


【バンッ!バンッ!バンッ!】


火を噴き放たれた銃弾は、見事にデルシャスを打ち抜いた。


「無防備に近づこうとするからだよ」


三発の銃弾を受け、その場に倒れこむデルシャス。


「き・・・貴様・・・それは・・・」


「ああ、これか、これは拳銃といってな、この世界の武器だ。


 その銃弾に、魔力をこめて、俺がちょっと細工をしたものを

 お前に打ち込んだんだよ」


「な・・・・・」


その言葉を最後に、デルシャスは息絶えた。


「どうだ、俺ってかっこいいだろ!」


ピオーネに、自慢するグリッチだったが、ピオーネの目は冷たい。


「あんた、そんな武器、いつ作ったのよ。


「ああこれか?

 本署に出入りしているときに

 ちょっとお願いして、頂いて・・・まぁ、そういうことだ」


上空からピオーネが降りてくる。

そして、グリッチの横に並ぶと、拳銃を奪い取った。


「ちょ、お前!」


「これは、あたしが貰ってあげる。


 感謝しなさい。


 それに、あんたは、もう一度、作ればいいでしょ。」


そう言い捨てると、銃を手に、上空へと浮かび上がった。


その姿を眺めているグリッチが口を開く。


「やっぱり欲しがったか・・・」


諦めたような笑みを浮かべながら、背後からもう一丁の拳銃を取り出した。



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