第23話解決 vsデビン

デビンを倒したラプロスが地下から戻ると

礼拝堂には、多くの灰が舞っていた。


「うむ、こちらも終わったようじゃな」


ラプロスの言葉に、笑顔を見せて

駆け寄ってくるピオーネとグリッチ。


それとは逆に、地下へと駆け出す神父。


妻と娘の姿を探すつもりだろうが

ラプロスは、わかっていた。


──地下に生きた人の姿など、なかったところをみると

  あの光で、灰になっていたのかもしれぬのぅ・・・・・


残念に思うが、神父も、魔族に手を貸していたのだ。


このような結果になったのは、ある意味

自業自得としかいいようがない。


そんな神父を放置し、3人が教会を出て行くと

そこには、待機していた警察官たちの姿があった。


「お、お前たち・・・」


声をかけてきた山田に、ラプロスが答える。


「終わったぞ、早くファミレスに連れて行くのだ」


「えっ・・・」


「どうした?

 約束は果たしたぞ」


「わかっている。


 だが、後処理がまだ残っているから

 ファミレスは、後日・・・では、ダメか?」


「ダメに決まっておろう。


 山田よ、約束を果たすのだ。」


山田が、勝手に現場を離れることは出来ない為

困っていると、姿を見せていた上村が、ポンッ!と肩を叩く。


「ここはいい、連れて行ってやってくれ」


上村は、その言葉と同時に、茶封筒を手渡す。


「これで頼む」


茶封筒の中身は、聞かなくてもわかる。


ファミレス代だろう。


有難く、それを受け取った山田は、三人を引き連れて

ファミリーレストランへと向かった。


ファミリーレストランに到着した四人。


席に座るや否や、三人は、メニューを眺め始める。


そして・・・


想像以上の注文を始めた。


次々に押し寄せる料理の数々。


それを、笑みを浮かべながら食してゆく三人。


それを眺めながら、コーヒーを飲む山田。


「おい、貴様は食べないのか?」


「ああ、今回の主役は、お前たち三人だ。


 気にせず、食べてくれ」


「わかったぞ」


テーブルの上に増えて行く空き皿。


それを回収に来る店員の手には、新しい料理がある。


それを、また空き皿にしてゆく。


そして、満足いくまで食べ尽くしたあと、三人は、デザートへと移行した。


ここで、一息ついたラプロスが、二人に問いかける。


「お前たちは、今後、どうするつもりなのだ?」


「今後、ですか?」


「うむ。


 二人は、わらわが渡した帰還の為の魔法陣を持っておるから

 いつでも帰れる筈だろう」


「・・・・・」


ピオーネとグリッチは、顔を見合わせた。


そして、ピオーネが、代表して口を開く。


「もし、魔界に帰ったとして、われわれは、どうなるのでしょうか?」


「確かなことは言えぬが・・・良いとは言えぬな。


 お前たちは、わらわの命に従い、今は、あちらの世界に

 誰も送りこんでおらぬ。


 それに、今回のことが知れれば、間違いなく裏切ったと

 思われるだろうな」


「だろうなぁ・・・」


諦めたようにつぶやくグリッチに、ピオーネが問いかける。


「でも、私たちが加担したなんて、向こうには、わからないでしょ」


「確かに、そうだけど」


「なぁ、お前たち、あ奴らに、帰還のほうの魔法陣は、渡したのか?」


「あっ!」


渡してはいないのだ。


四大貴族が持っているのは、送り込むことのできる魔法陣だけだった。


今更ながら、そのことに気づき、二人が驚いていると

ラプロスが、決定的なことを伝える。


「こちらに送りこまれた魔族が、この魔法陣を、正確に描けるとは思えぬ。


 ならば、どうやって、元の世界に戻るのだ?」


「それは・・・」


「簡単なこと、わらわを倒すか、お前たちから奪う。


 結論を言えば、お前たちは、既に見限られている可能性が高い。


 もしくは、わらわに、殺されたと思われているのだろう」


確かにその通りだ。


話を終えて、元の世界に戻ることは、良いこととは思えなくなった二人だが

以外に、あっけらかんとしている。


「まぁ、帰ることなんて、考えていなかったから

 俺は、気にしねぇよ。


 こっちはこっちで、面白そうだしな」


その言葉に、ピオーネも頷く。


「確かに、あたしの気に入りそうなドレスも沢山あるし、

 悪いことばかりでもないわ」


「まぁ、二人が、それで良いのなら、わらわから、言うことはない。


 今後も、わらわに力を貸すのじゃ」


「「はい!」」


話を終えた三人は、再びデザートを食べ始めたが、

その横にいた山田は、話の内容よりも

会計のことを気にしていた。


ラプロスを筆頭に、ピオーネ、グリッチの三人は

満面の笑みを浮かべて店を後にする。


店から出たあと、山田が問いかける。


「この後、どうするんだ?」


「わらわは、帰るぞ」


「それなら、あたしたちも・・・」


「そうか、それなら、送っていこう」


再びパトカーに乗り込むと、三人を送るために車を走らせた。


今回の出来事は、上村達、この世界の人々にとっては

信じられないような出来事だった。


同時に、異世界が存在し、

空想上の魔族といわれる者たちの存在を、理解する出来事でもあった。


事件が、一応の解決を見たところで、上村は考える。


──今後も、こんなことがあれば・・・・・


魔法を使う相手を、捕らえることができるのだろうか?

牢に放り込んだとしても、逃げたりしないか?


色々と不安がよぎる中、署長室の扉が叩かれた。


「入れ」


姿を見せたのは、先ほど、ラプロスたちを送ってきた山田だった。


「署長、戻りました」


「そうか、ご苦労だったな」


「ははは・・・」


山田の表情から、本当に疲れていることはわかったが

今はそれよりも、聞かなければならないことがあった。



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