第16話連続強盗事件③

一人になったラプロスは考える。


「あ奴の記憶を読み取っては見たが、顔を覆っていたせいで、

 犯人はわからなかったが、慈悲のないことは理解した。


 ならば、こちらも慈悲をかける必要は、なさそうだな」


夜が更けるまで自宅で過ごしたラプロスは、

何かを決心したかのように、立ち上がり、携帯電話を手に取った。


『トゥルルル・・・トゥルルル・・・もしもし』


「わらわじゃ、迎えに来い」


電話の相手は、カザリ。


用件だけ伝え、電話を切ると、ラプロスは、部屋を出て行った。


しばらくマンションの下で待っていると

目の前に、一台の車が止まる。


運転席には、カザリの手下らしき男の姿があり、

カザリは、助手席に控えていた。


そして、ドアを開けて、ラプロスの前に飛び出してきた。


「魔王様、お迎えに上がりましたが、どこに行くんですか?」


「わからん、タタキとやらの出そうなところに連れて行け」


「えっ!?」


無茶ぶりもいいところだが、取りあえず車を走らせた。


人気の少なく、暗い住宅街などを走らせてみるが

当然、見つけることはできない。


「おい、こんなことをしていて、タタキとやらは見つかるのか?」


「それは、ちょっと・・・」


「ならば、貴様が前に行っていた

 名簿を売っているという者のところへ案内せよ」


名簿を売っているのは情報屋だが、彼らは、アングラな世界の住人。


なにか不手際があれば、こちらが狙われることになる。


その為、カザリ自身も、必要以上に関わりたくはない。


それに、ラプロスを連れて行けば、必ず揉めるだろう。


わかっているからこそ、躊躇するのだが、ラプロスがそれを

許す筈がない。


「どうした?


 早く案内せよ」


「お、おい、あそこに迎え」


運転しているカザリの手下の【高坂】は、言われるがまま車を走らせた。


高坂が運転する車が向かった先は、山奥や街外れではなく

ネオンが煌びやかな繁華街。


「すみません、ここから先は歩きです」


「うむ」


近くのパーキングに車を止めると、三人は、車から降りた。


そして、カザリの案内に従い歩き出す。


ラプロスにとっては、初めての繁華街。


夜なのに、明るく照らされている光景に、思わず感心する。


「人も多く、煌びやかなところじゃのぅ」


辺りを見渡しながら、歩いていると

突然声をかけられた。


「君、可愛いけど、どこかの店で働いているの?」


ラプロスに声をかけてきたのは、チャラそうなイケメン。


「わらわは、働いてはおらぬ」


「なら、いい話あるんだけど、よかったら

 お茶でもしながら、話をさせてよ」


ぐいぐいとラプロスに迫るチャラいイケメンだったが、

カザリが間に割って入った。


「悪いが、俺たちには用事がある。


 スカウトなら、他でやってくれ」


「はぁ?」


突然不機嫌になるチャラいイケメン。


「お前さぁ、今は、この子と話をしているの?

 それとも、お前は、この子の彼氏か、なんか?」


「違うけど・・・」


「なら、黙っていろよ、さぁ、行こうぜ」


チャラいイケメンは、強引にラプロスを連れて行こうと

肩に手を乗せようとしたのだが、ラプロスがそれを許さない。


「気軽に、わらわに触れるでないわ、下種【ゲス】が」


その言葉と同時に、男の手を取り、放り投げた。


看板に衝突して、気を失ったチャラい男に

周りの人々は、唖然とした表情で、見ているだけ。


静まり返る中、ラプロスが口を開く。


「ほれ、早く案内するがよい」


「あ、はい・・・」


今の出来事が、なかったかのように歩くラプロスを追いかけ

カザリは案内をする。


そして、しばらく歩き、到着したのは、ネオン煌びやかなビルの一つ。


カザリを先頭に、ビルに入ると、エレベーターに乗り込んだ。


1階、2階と進み、3階に到着すると、ドアが開く。


エレベータから出ると、目の前には二人の男が立っていた。


カザリは、男たちを無視して奥へと進み、奥の扉を開けた。


「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」


黒服の言葉の後に、カザリが告げる。


「悪い、酒は苦手でね、カルピスあるか?」


「では、こちらへ」


何かの合図だったのか、黒服は、奥へと案内をする。


そして、VIPと書かれた扉を叩いた。


「お連れの方が来ました」


黒服の言葉の後、ゆっくりと扉が開く。


部屋の中には、扉を開けた露出の多い女性のほか、

数人の男性と、はだけた状態の女性たちの姿があった。


「なんじゃ、ここは・・・」


眉間に皺を寄せるラプロスに、カザリが呟く。


「あの真ん中に座っているのが、情報屋です」


「ふむ・・・さっさと用事を済ますぞ」


ラプロスが、前に進み出ると

はだけた女性に纏わりついていた男の一人が立ち上がり、歩み寄る。


「おい、この女は、貢ぎ物か?」


男は酔っているのか、定まらない視線のまま、ラプロスに顔を近づけた。


「酒臭い、わらわの邪魔をするな!」


軽く蹴り上げた足は、見事に男の股間にヒットし、男は、泡を吹き倒れた。


「汚いものをおっ立てるではないわ」


言い放った後、男の横を通り過ぎ、情報屋に近づこうとするラプロスだったが

再び、男たちが道を塞ぐ。


「おい、くそアマ、何してくれてるんだよ!」


男がこぶしを振り上げた、ラプロスに向けて振り下ろす。


だが、その拳をラプロスが掴む。


「貴様ら、邪魔をするなと言っておるであろうがっ!」


腕を掴んだまま軽く振ると、男が吹き飛んだ。


大きな音を立てて、壁に衝突した男は、一瞬張り付いたようになった後

ズルズルと床に落ちた。


男たちの動きが止まる。


「おい・・・」


そんな男たちのことは気にせず、前に進むとラプロスは

情報屋の前で止まった。


「お前が情報屋だな」


「そ、それがどうした・・・」


声が震えている情報屋に、ラプロスが告げる。


「貴様は、何でも仕入れるらしいな。


 わらわが欲しいのは、タタキとやらをやっている奴の情報だ。」


「へへへ・・・たしかに俺は、情報屋だ。


 金を積めば、どんな情報でも仕入れてくる。


 だがな、依頼者の情報は、売らねぇんだよ!」


強気で言い放った情報屋だが、相手が悪い。


見た目は、少女かもしれないが、その正体は魔王なのだ。


「良い度胸だな、だが、その態度、どこまで通用するか試してみるか・・・」


あくどい笑みを浮かべたラプロスが、ゆっくりと右手を差し出した。


「では、始めるか・・・貴様がどこまで耐えれるのか楽しみじゃ」


右手から異様な空気が放たれ、辺りを包み始めると

一気に気温が下がる。


それと同時に、視界が奪われてゆく。


「お、おい、なんだよこれは・・・」


完全に視界を奪われると、情報屋の前には

この世の者とは思えない異形の者たちの姿が現れ始め、情報屋に襲い掛かった。


「うわぁぁぁぁぁ・・・やめてくれぇぇぇ!!!」


腕に嚙みつかれ、血が噴き出すと、異形の者たちが群がった。


「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」


腕が千切れると、今度は、足に噛みつき始める。


「た、助けて・・・お願いだ・・・た、助けて・・・」


懇願しながら、情報屋は意識を失った。


それからしばらくして、情報屋が意識を取り戻すと

千切れたと思っていた腕には、傷ひとつない。


「気が付いたようじゃな、それで、話す気にはなったか?」


その問いかけに、ガタガタ震えている情報屋は、何度も頷く。


「ならば話せ」


「わ、わかった」


情報屋は、バッグから、なにやら分厚い資料を取り出すと

その中から、2枚の紙を、ラプロスに差し出す。


「この辺りで、タタキを行っているのは、この二組が考えられます」


「ほう・・・」


資料を眺めるラプロスだが、この世界の字は読めないのだ。


ファミレスの注文などは、写真があるので理解ができたが

字だけの資料は、読むことはできない。


「おい、カザリ・・・お前が覚えるのだ」


「えっ、あっ、はい」


資料を受け取ったカザリは、声に出して読み上げ始めた。
















































 


 

 

 













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