第14話連続強盗事件①

翌朝になっても、山田は帰って来なかった。


「わらわの朝食は、どうなるのだ?」


全く関係ないことで、憤慨したラプロスは、

ポケットから、紙を取り出す。


「おお、これじゃ」


携帯電話を取り出したラプロスは、ポチポチとボタンを押し

どこかへ連絡をとる。


『トゥルルル・・・トゥルルル・・・』


「・・・はい」


「わらわじゃ、今すぐ迎えに来るのだ」


「えっ!」


要件を伝えると、ラプロスは、電話を切った。


それからしばらくすると、マンションの前に、カザリの車が到着した。


車を飛び出したカザリは、マンションの入り口にある呼び出しボタンを押す。


「カザリです。


 到着しました」


「うむ、すぐに参るぞ」


連絡を終えた後、カザリが待っていると、ラプロスが下りて来た。


「待たせたか?」


「いえ、それで、どんな御用で?」


「うむ、食事じゃ」


「えっ!?

 食事ですか?」


「山田が帰って来ぬから、わらわは、食事がまだなのじゃ」


「・・・わかりました。

 行きたいところはありますか?」


「お主に任せるぞ」


「わかりました」


ラプロスが車に乗り込むと、カザリが車を出す。


そして、向かった先は、ファミリーレストラン。


到着した二人が、空いていた席に腰を下ろして、注文を終えた後

カザリが口を開く。


「あの、一緒に住んでいる方は、どういう仕事の方なんですか?」


「なんじゃ、気になるのか?」


「いえ、帰って来ないとか、何か、特殊な仕事かと思って・・・」


「特殊かどうかはわからぬが、山田の仕事は、警察官とか申しておったわ」


「警察官・・・」


カザリ達半グレからしたら、厄介な相手だ。


「これはまた、面倒な相手と生活しているんですね」


「厄介なのか・・・わらわには、わからぬが、それなりの生活を送っておるぞ」


「そうなんですね、でも、ポリに・・・いや、相手は警察ですから

 俺たちと会っていることは、あまり言わないほうがいいかも・・・です」


「なぜじゃ?」


「俺たち半グレは、あいつらにとっては、厄介者でしかすぎませんから」


「そうなのか・・・まぁ、気にすることはない。

 山田は、ああ見えて話の分かる男だ」


「まぁ、魔王様が、そう言うのなら・・・」


たしかに、ラプロスをどうこうできるとは思わないが、

だが、警察に追われることだけは避けるべきだ。


そう思ったカザリが決意する。


「なんかあったら、すぐに連絡ください。


 俺、何があっても駆けつけますから」


カザリがここまで強く決心するのには、訳がある。


あの日、ラプロスを送った後

再びピオーネとグリッチに、呼び出されていた。


そして、そこで告げられたのは、ラプロスの案内役兼、連絡係。


「魔王様は、この世界のことをまだ知らぬ。


 その為、貴様が面倒を見るのだ」


「えっ!?」


「貴様は、あたしたちから逃げたこと、忘れてはいないわよね」


「・・・はい」


「そう、なら答えるべき言葉は、わかっているわよね?」


「はい、魔王様から、連絡があれば、すぐに駆けつけます」


「うん、いい返事よ、でも、私たちへの連絡も忘れないでね」


可愛く言い放ったピオーネだが、目の奥は笑っていない。


何とも言えない空気の中、カザリは何度も頷いた。


そして、現在に至る。


ファミレスで、黙々と食事を摂っていたラプロスが、問いかける。


「そういえば、連続強盗犯とやらが流行っているそうだな」


「ああ、タタキですか?」


「タタキ?」


「強盗のことですよ。

 闇バイトなどを雇って、金を持っていそうな家を襲うんですよ」


「ほぅ、だが、どうやって金を持っているのかがわかるのだ?

 この世界には魔法がないと聞いておるのだが・・・」


「はい、魔法はありません。


 ですが、リストがあるんです。


 そのリストで、金を貯めこんでいそうな家の情報が手に入ります」


「そうか、それを使って、強盗、いやタタキをしているのだな」


ラプロスが話し終えると同時ともいえるタイミングで

カザリの手下が飛び込んできた。


「カザリさん!」


息を切らしているのは、こちらの街までついてきた手下の一人、ヒロキだ。


「どうした?なにかあったのか?」


「・・・うちのじいちゃんの家が・・・やられました」


「やられた?」


カザリが、ラプロスの顔をみる。


「ん?」


食事を続けているラプロスと、カザリにヒロキが言い放つ。


「じいちゃんの自宅が、タタキにあったんです・・・」


「なに!!!」


思わず立ち上がったカザリは、ヒロキと共に、ファミレスから出ていこうとするが

ラプロスが、それを止める。


「待つのじゃ!」


ラプロスの制止を断るようにカザリが言い放つ。


「魔王様、悪いがこのままにはできねぇよ、

 それにヒロキだって、爺さんが心配だと思う。


 だから、早く行ってやらないと、ダメなんだ」


「わかっておる。


 だが、急いだところで、何も変わらん。


 ヒロキとやら、爺さんの傍には、誰かおるのか?」


「多分、両親がいるかと」


「ならば、両親に連絡をせよ、その為の携帯電話じゃろ」


どや顔で、携帯電話を見せるラプロスに、

ヒロキは、持っていた携帯電話で、両親に連絡を取った。


しばらくのコール音のあと、母親が電話に出る。


「もしもし、母ちゃんか、爺ちゃんは?

 ・・・・・うん、うん、そんなぁ・・・

 ああ、わかった。


 俺も今から向かうよ」


話し終えたヒロキが、電話を終える。


「それで、爺さんの容態は?」


「結構殴られたみたいで、呼吸はしているけど、重体だそうです・・・」


そう呟いたヒロキの様子から、危険な状態だということは理解できる。


「ヒロキ・・・」


カザリが強くこぶしを握り、タタキに入った奴らに対して

腸が煮えかえるほど怒りを覚え、こぶしを強く握ったとき

食事を終えたラプロスが、口を開いた。


「ヒロキとやら、その爺ちゃんの居場所は、わかっておるのだろうな」


「はい」


「ならば、わらわをそこに連れて行け」


「えっ!?」


「早く、案内せい」


先頭に立ち、ファミレスを出て行くラプロス。


もちろん代金は、払っていない。


仕方なく代金を払い、ラプロスの後を追ってきたカザリが、

外に出ると、既に、ラプロスが助手席に乗っていた。


「早くするのじゃ、置いてゆくぞ」


運転できるのは、カザリだけ、車のカギを持っているのもカザリ。


それなのに、置いてゆくという暴言を吐くラプロスに

大きく溜息を吐いた後、カザリは、運転席に乗り込んだ。























































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