第11話
「イエル、ほら来て。あなたの弟よ。」
「こ、この子が僕の弟なの?可愛い‥天使みたいだ!」
「ふふっイエル、この子を守ってあげてね。私はもう‥」
そう言って母さんは切なく微笑んで、数日後に死んだ。父さんは、母さんが弟を産む数日前に戦死したと知らされた。
父さんは、寡黙だったけど優しくていつも僕や母さんを守ってくれた。母さんは、息をのむほど美しく穏やかな人だった。
こうして僕は弟と2人天涯孤独となった。
しかし、周りの人は優しく僕が生活費を稼ぐため働く間、弟を近所の人達が面倒を見てくれた。大変だったけど、周りの人の支えもあってなんとか弟と日々幸せに暮らしていた。それから5年ほど経ち、急にその平和は崩されることとなってしまったが。
その日、僕は仕事も休みで弟と2人ゆっくり家で過ごしていたが、急に今まで聞いたこともないような轟音が響き渡り警報の音と悲鳴と銃声とが響き渡った。
僕は咄嗟に、弟を抱えて家を飛び出して逃げた。逃げに逃げた。裸足であることも忘れて、足が血みどろになろうと構わなかった。あの時母に誓ったように、なんとか弟を守るために逃げた。
それから、一時間ほど彷徨いなんとか安全そうな洞窟へ辿り着いた。きっとここなら奴らも来たりはしないし、他の生物からの攻撃も受けないだろう。
ひとまずこの洞窟で過ごして、それからの事はまた後で考えよう。今は生きることだけ考えるんだ、弟と。
それから三日後、弟を洞窟に置いて僕は街へ戻った。食糧も周りにはないし、それに何より街がどうなっているか不安だった。しかし、弟を連れて戻りでもしてまだ敵がいたらいけない、そう思って1人で向かった。
今思えば最悪の行動だったと思う。
あれだけ平和で栄えた街はもう何も、残っていなかった。家は潰れ、あたりはかつての住人たちの死体が‥。どうしてこんなことを、、目的はなんなんだ。何をしたというのか。でも生きるためにはこの絶望しかない街からなんとか食糧を見つけ出して弟の元へ戻るしかなかった。
「隊長、生存している生命体を発見。おそらく子供かと」
「今すぐ捕獲しろ。何せ、他の生命体は抵抗するものだから殺してしまった。せめて一体でも我が星へ持ち帰らなければ‥」
何か僕たちに似た姿の他の生命体が‥僕らの街を破壊したのか。一体なんのために?いや、それよりも早く戻らないと、こいつらに捕まったら‥。
そんな矢先、不幸にも僕は抱えていた食糧を落としてしまったのだった。
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