第5話

部屋はとても豪勢だった。

大理石の床、真鍮でできた家具…煌びやかな数々のインテリア。庶民には一生かかっても手にすることのできない美しい品々がそこにはあった。もっとも、この空間の中で一番非現実的かつ美しいのはアレンなのだが…。

アレンは部屋に着いてからずっと僕のことを見ている。まるで昔からずっと僕とことを知っているかのように…。

「あの…もしかして僕のこと知ってるんですか?」

「どうしてそう思うの?」

「…僕のことをそんなに見るからてっきり…」

アレンはフッと一瞬笑った気がした…。

と思った瞬間アレンは逆さになっていた。いや、僕が逆さになっていた。

「ねぇ…本気でそれ言ってる?」

「…?」

気づけばまた僕の視界は元通りになって、豪華でふかふかなソファの上に座っていた。

アレンはあの瞬間初めて…僕に軽蔑の眼差しを向けた。といっても会ったのはつい先ほどなのだが。

アレンは何かぶつぶつ呟いて…何かに怯えているようだった。そんな気配がしたのだ。

「ごめんね?ちょっと取り乱しちゃった」

アレンはまた会った時のように軽快な雰囲気を身に纏っていた。


僕は…本当は…分かっていたのに。それでもアレンがあんな目をするから、僕は僕は‥


「別に?気にしてない」



そう言う事しか出来なかった。多分、ここから僕と君は間違え続けてきたんだね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る