第19話

しかし男は「質より量」と言いながらも、意味のない量もあると秋村は思った。

つまり結局子どもができなかった関係性など何が残るのだろうか、と。

男女の関係で別れた後も友達関係が続くことなどあまりないだろう。

ましてや女性は「上書き保存」で、別れた後付き合った男性に自分への想いや記憶など上書きされる。

それでいて男は「フォルダ別保存」で、相手は自分にもう未練などないのに、男ばかり相手を覚えているのだ。

秋村は、ある時期、五月雨式に関係を持てる女性を探し回って片っ端から関係を持ったときがあった。ふと心配になってあるとき検査をしたらクラミジア陽性だった。

しかしそうやって関係を持った女性たちとの思い出に何の意味もなかった。

ただ徒労だった。

たやすく手に入れられるセフレにはまだ意味があるだろう。

非モテ感がでないで余裕を持てることで、よりより女を捕まえれられる。

ただその時の快楽を楽しむ意味もある。

しかし、追い立てられるようにただやれる女を探し回って関係を持つことは虚しさしか残らなかった。

「質より量」という男の戦略には、アラジンや美女と野獣など、女性が買い求める商業的なラブストーリーへのアンチテーゼの意味が込められている。

そういった女向けの商業的なラブストーリーに騙されて、「運命の人」「一番大好きな人」を男が追い続けてしまうと、女の戦略に飲み込まれて不幸になる。

男なら、自分で良いと言ってくれる中でほどほどに納得できる女と、まずは子どもを作ったら良いのだ。


そしてこのとき秋村には子どもがいなかった。

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