勇者一向に忍び寄る......
あんなに、小さく見える、俺の家が....家畜なんて豆粒程度の大きさだ。
まだ種類は識別できる。
ここら辺は、子供の頃に何度も行った事がある。
昔と変わらず、目に入るのは、雑草が地面を彩る緑色だけだ。歩いていても、歩いているのかと不安になってしまう程に。
「本当に..昔からなにもないな....」
「ここは昔、魔物と、騎士たちが戦いを繰り広げた場所だ。
その影響か、事実無根の厄災の噂が後を経たない。だから皆、
此処へは住もうとは思はない。住もうと思う奴は、
馬k...うゔん.....何でもない。」
なんだ?何か言いかけたよな?ばk?あぁ...馬鹿ね。
はっ?馬鹿!?いやいやいや...なんてこと言い出すんだ!
この勇者は...魔王討伐としての使命はどうやら順調なようだが...
勇者としての自覚の使命は、これっぽっちも感じていないようだなぁ。
「あのなぁー...ステイラ、お前....勇者としての自覚はあるのかよ。」
そう言われると、ステイラは振り向きざまに言った。
「今更何言ってんの?変なこと言うな....そろそろ、大牙の森だから。
そっちに集中しろ」
「なんだよ...せっかく人が注意喚起してあげたっていうのに。」
大牙の森か...あそこは、祖父、祖母に絶対に入るなと言われ続けていた。
因みに...俺は昔、この森に入って死にかけたことがある。
つまり....その...その教訓を破って、森の中に入ったということになってしまう。
いや、でも、生きてるから。結局生きてるから良いんだ。
でも、怖かったのは覚えてるけど...どうやって助かったかは、忘れた。
こんな事忘れるはずもないのに....
ドッ
いてっ!
「いたっ。」
ステイラが俺を、冷たい眼差しで突き刺してくる。
「気を付けろよ...ステイラ。」
「それは、こっちの台詞だ。
気を取り直して....さて...良いか?ハル...大牙の森で、魔物にあったら?」
「目を合わせるな!ですよね。」
長い金髪を揺らしながら彼女は微笑んで回答した。
なんて可愛いんだ!
「よろしい。そういう事だ。今の話聞いていたから?」
「えっ..あっ....あぁ!目は合わせない...だろ?」
危ない危ない....ハルさんの可愛さに、あまりに泥酔してしまっていた。
「少しの間があったが...まぁ良いだろう。」
ステイラはまた視線を戻し大河の森へ歩き続けた。
大牙の森を歩き続けて幾時間かがだったはずだ。
一向に抜ける気配がないのと、全く魔物が現れる気配もない。
「おい、あんなに用心しといて
肝心の魔物が現れないっていうのはどういうことなんだ?」
「おかしい....何かがおかしい...ハル..きた時は魔物が数えきれないほどいたよね?」
「えぇ...何十体か、いましたけど」
嫌な予感がする。何かが...何かがこの森を牛耳っている。
「とりあえず、進むぞ」
進んで数分が経って...
目の前に広がった光景は想像を絶するものだった。
「おい...なんだよ..これ....」
大量に魔物が死んでいた。木の枝に刺さった魔物がいる...気味が悪い
...地面が魔物の死体で見えない。
しかも、どの魔物にも...刺し傷のようなものがあった。
「なんだよこれ...」
ステイラは曇った顔をした。
「....分からない....ただここで死んでいる魔物は...どれも...どれも上級指定されている魔物だ。私でさえ、一体倒すのに、数十秒かかるのに。それをこの量となると...」
「皆さん!!来てください」
ハルさんだ何かあったのか!?
「どうしました?ハルさん。」
「どうした?ハル」
「そ...それが...ここら辺の魔物は....皆んな笑いながら寝てるんですよ!!」
んっ?そんな馬鹿な、笑ってるなんてことあるわけ...あんじゃん
なんだ?なぜ全員笑ってる?
こいつらは夢の中で...夢の中で舞踏会でも開いてるのか?
「こいつら脈がない。」
「はっ!?じゃあ死んでるってことか?」
「そういうことになるな。」
「でも何でこいつら笑ってんだよ。」
沈黙の表情を俺たちは浮かべた。
「あっ!!思い出しました!!」
「何をだ?ハル」
「私が、魔法学校に通ってた頃...
相手を夢の中へ堕とす魔法を使う....という生徒が私の同級生にいました。
でも...その子は少し問題があって...対人試験があった時、その対決は、相手の方の優勢でことが進んでいきました....でも..つい負けず嫌いだった彼女は...当時、教師からも危険ということで使用禁止を命じられてたサムニウム....んー?すいません名前は忘れてしまいましたが...とにかく....禁忌を使ってしまった、
彼女は...対戦相手の男の子を夢の中に堕として、
そのまま閉じ込めてしまったんです。
その事を受けて、彼女は魔法学校を退学処分となり、
現在まで行方を潜ましています。もしかするとこの彼女かもしれません!」
「夢に閉じ込められた、男の子はその後どうなったんですか?」
「噂では、ずっと家族に看病されながらベットの上で寝ていると言います。」
「その子は、笑っていると聞いたか?」
「いえ、その子は悪夢を見てうなされている...と聞いたことがあります。」
「と...なると、
この所業をハルの同級生がやったならその同級生...
夢を操れるようになっていてもおかしくないね。」
「そう...ですね..」
「さてと....話は大体整理できたし...そろそろかな...」
「そうですね。」
2人草むらの茂みに視線を向けた。
はっ?この人たち何やってんの?いきなり変なこと言うし、
変なところ向き出したんだけど??こわっ。
だってそっちの茂みには何もないじゃ...
「そこにいるんだろ??出てこいよ」
「そうですよ!!正々堂々とです!」
えっ!?そこに誰かいるんですか!?!?
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