特に期待してなかったけど異世界に転生した俺、せっかくだから今度は全力で人生を楽しむと決めた。
リフィル
第1話 なんだ、転生したのか
ある日、俺はコンビニで立ち読みしている最中に背後からコンビニ強盗に刃物で首を切られた。 腰を抜かして悲鳴を挙げる女店員、それに興奮する強盗。他の客は一目散に扉から逃げ、あっという間に居なくなった。
俺は首から流れる大量の血を他人事のように眺めながら、死を悟った。定職にも就けず、無気力な毎日を送っていた俺に取って死ぬ事は別に怖くなかった。
むしろ内心では「これで死ねる」と喜んでいた。早くこんなクソみたいな現実に幕を降ろし、さっさと次の人生を送りたかった。
まぁ、その時には『俺』と言う存在は消えている訳だけど。そんな事は正直、どうでも良い。
あぁ、何だか眠くなってきた。思ったよりも身体に痛みは無い。痛みを感じないなんて、最高の死に様だ。
◆◆◆
「おぎゃあ、おぎゃあ!」
目を覚ますと、俺は俺のままだった。だが、俺の割には色々と違和感がある。やたらと視界はボヤけているし、手足の感覚も何だか鈍い。まるで自分の身体じゃないみたいだ。
「やったぞ、元気な男の子だ!」
聞き覚えのない男に両脇に手を差し込まれ、軽々と持ち上げられる。馬鹿な、80キロもある俺を意図も簡単に持ち上げるなんて有り得ない!
目の前の男を観察するが、とてもじゃないが筋肉ムキムキのマッチョ男には見えない。それに持ち上げられてるにしては、視界がおかしい。
視線を動かし、窓に視線を向ける。そして窓ガラスに映る自分の姿を見て、俺はようやく自分の姿が赤ん坊に逆戻りしている事に気付いた。
「この子は絶対に立派な騎士にしてみせる!」
状況を完全には飲み込めないが、この男が俺を騎士にしたいと言う事は分かった。それに窓の外を飛んでいた不思議な鳥を見て思ったが、ここは俺の居た世界じゃない。男達の姿や格好、騎士と言う言葉も変だ。
「お前の名前は今から“ベルグ”だ! これからヨロシク頼むぞ!」
──それから五年後。俺は騎士団長である父から日々、様々な訓練を受けさせられていた。剣術は勿論、魔法も座学も貴族と付き合う為に社交界にも参加させられた。
「お前も五年後には王都の魔法剣術学院に通う事になる。更に精進し、己の力を高めるのだ!」
「お断りします」
俺は父親の言葉を拒絶した。三歳の頃から様々な修行をさせられ、口を開けば「騎士を目指せ」や「強くなれ」と言う言葉ばかり。もう限界だった。
「……なんだと?」
父の眉がピクリと動く。これまで一度も逆らって来なかった俺が反抗したのが面白く無いのだろう。だが、知った事か。
ただでさえ前世の記憶を引き継いでるお陰で父親と言う意識が薄いのに、毎日のようにガタガタと言われたら嫌気が差して当たり前。むしろ、これまで大人しく従ってただけ感謝して欲しい位だ。
「俺の言う事に従わないと容赦しないぞ!」
「今度は脅しですか……だけど、何度言われても俺は貴方に従うつもりはありません!」
ここまで育ててくれた事には感謝している。だが、母が三年前に死んでから父は変わってしまった。妻を亡くして出来た心の穴を埋めるように俺を強くする事だけに執着し、それにも関わらず、俺には一切の関心を向けない。
「それなら力で従わせるだけだ。お前程度の剣術で騎士団長の俺に勝てると思うなよ」
「まぁ、純粋な剣術じゃ無理でしょうね」
「それが分かってるのなら、大人しく俺に従え!」
「却下。と言うか、俺はもう家を出ていくので黙って行かせて貰えません?」
「ふ、ふざけるなぁぁぁ!!」
そう叫びながら父が木剣で突撃してくる。指揮を下す者が感情的になるなんて愚の骨頂だ。その時点で今の父に騎士団長を名乗る資格は無い。
俺の木剣と父の木剣がぶつかり合う。だが、それも一瞬。次の瞬間には父の持つ木剣が空高く弾け飛び、俺の木剣が父の首に剣先を向けていた。
「さようなら。二度と会う事は無いでしょうけど、お元気で」
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