第10話 恩師

香織は、信用金庫の会議室で一郎と涼介と共に、八木沢と佐々木優香からの提案について再検討していた。提案された新技術、LiDAR(ライダー)技術の開発について、どう進めるかが焦点だった。LiDAR技術は、自動運転車の安全性を飛躍的に高める可能性を秘めていたが、その開発には多大な労力と資金が必要だった。


香織は、これまでのことを思い返していた。門司港の街並みが窓から見える会議室で、香織の心は決断を迫られていた。


香織は、ジャーナリストの石田美和に相談してみることを決めた。石田は技術やビジネスに詳しく、頼りになる友人でもあった。


香織がカフェ「エトワール」で石田と落ち合うと、窓からは美しい海が広がっていた。香織は八木沢からの提案について石田に説明し、意見を求めた。


石田美和は資料を見ながら考え込んだ。そして、香織に向き直った。


「香織、実は私が知っている世界的なLiDAR技術の研究者がいるの。彼は桜田社長の恩師だった大学教授で、世津波教授という方よ。」


香織は驚いた。そんな人物が身近にいたとは。


「その教授に会って、現状のLiDAR技術の課題について聞いてみるといいわ。彼のアドバイスがきっと役に立つはずよ。」


香織は感謝の意を込めて石田に微笑んだ。そして、一郎にこの話を伝え、教授を訪ねる準備を始めた。


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数日後、香織と一郎は世津波教授の研究室を訪れた。教授は年齢を感じさせない活力で彼らを迎え入れた。教授の研究室には最新の技術機器が揃い、緻密なデータが並んでいた。


世津波教授は、一郎を見るなり、温かい笑みを浮かべて手を差し伸べた。


「一郎君、久しぶりだね。元気そうで何よりだ。」


一郎もその手を握り返し、感激の表情を浮かべた。


「教授、お元気そうで何よりです。実は、ある技術的な相談がありまして。」


世津波教授は、興味津々で一郎たちを迎え入れ、研究室の一角に案内した。教授の研究室には、過去の成果物や最新の研究資料が整然と並べられていた。


教授は、香織たちの訪問に興味を示し、LiDAR技術の現状と課題について詳しく説明してくれた。現状のLiDAR技術には、特に強度や精度に課題があることがわかった。


「LiDAR技術は非常に有望ですが、まだまだ改良の余地があります。特に、強度と精度を両立させることが重要です。」


教授の説明を聞きながら、一郎の心には新たな希望が芽生えていた。


「教授、私たちもその課題解決に向けて何かできることがあれば協力させていただきたいです。」


教授は一郎の情熱に感銘を受け、共に研究を進めることを快諾した。


「それは素晴らしいことです。一緒に頑張りましょう。桜田製作所の技術力を活かして、世界に通用するLiDAR技術を開発しましょう。」


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研究が始まると、香織と一郎は教授の指導の下で、具体的な技術開発に取り組み始めた。教授の知識と経験が、香織たちの技術力を一層引き出した。


桜田製作所の技術者たちも、この新しい挑戦に意欲を燃やしていた。佐藤直樹は、特に熱心に新しい技術の導入に取り組んでいた。


「このLiDAR技術が実現すれば、自動運転車の安全性が格段に向上する。僕たちの技術がその一翼を担えるんだ。」


田中陽介も、佐藤の言葉に同意しながら作業を進めていた。


「桜田製作所の未来は、僕たちの手にかかっている。頑張ろう、佐藤。」


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その夜、香織と一郎は信用金庫に戻り、今後の計画について話し合った。彼らの顔には希望の光が差していた。


香織は一郎に微笑みながら言った。


「私たちの力を合わせて、世界に通用する技術を生み出しましょう。」


一郎も頷き、未来に向けた決意を新たにした。


「桜田製作所の技術が世界を変える。それを実現するために、全力で取り組もう。」


こうして、香織たちの新たな挑戦が始まった。世界に通用するLiDAR技術の開発は、彼らの手で確実に進められていくのだった。

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