第2話 技術の未来

門司港のカフェ「エトワール」。窓から見える海は静かで、波が穏やかに打ち寄せていた。香織はカフェの奥の席に座り、目の前のカプチーノに目をやった。そこに、カフェの新しい従業員で、美男子として評判の山瀬健太がやってきた。


「ご注文お伺いしますか?」と山瀬は爽やかな笑顔で尋ねる。


「もう少し後でお願いね、今は待ち合わせをしているの」と香織も微笑んで応じた。


香織はしばらくして、豊橋モータースの新プロジェクトの連携担当として配属されたばかりの佐々木優香を待っていた。優香は、香織が探している新技術のヒントを持っているかもしれないと期待していた。


やがて、優香がカフェに入ってきた。彼女はカフェの風景に少し戸惑いながらも、香織の元へ急ぎ足で向かった。


「香織さん、お待たせしました」と優香は少し息を切らせながら席に着いた。


「優香ちゃん、久しぶりね。座って、ゆっくり話しましょう」と香織は優しく声をかけた。


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二人は軽い挨拶を交わした後、本題に入った。香織は桜田製作所の現状と、帝都自動車からの厳しい要求について説明した。優香は真剣な表情で聞いていたが、時折メモを取りながら話を進めた。


「実は、豊橋モータースが開発しているストロングハイブリッド車について、ご存じでしょうか? 彼らは高い電圧を使って強力なモーター駆動を実現しようとしています」と優香が言った。


「その話は聞いたことがあるけれど、具体的にはどういうものなの?」と香織が尋ねる。


「エンジンとモーター、発電機を遊星歯車による動力分割機構でシームレスに連携させる技術が必要とされています。この部品の製作には高度な技術が求められます」と優香は熱心に説明した。


香織は真剣な表情で聞き入った。「それが具体的にはどう役立つの?」


「自動運転車では、エンジンとモーターがシームレスに連携して動くことが必要なのです。例えば、高速道路ではエンジンが主な動力源として働き、都市部ではモーターがメインで動くことが多いです。この切り替えをスムーズに行うために、遊星歯車がエネルギーを適切に分配してくれるのです」と優香が説明した。


「なるほど、つまり遊星歯車があることで運転が滑らかになり、燃費も良くなるのね」と香織が理解を示した。


「そうです。そして、耐久性も非常に高いので、長期間使用する自動車にとっては非常に重要な部品なのです」と優香が続けた。


香織は更に深く理解を得るために、さらに質問を投げかけた。「でも、なぜ桜田製作所がこの技術を開発することになったの?他の大手企業も似たような技術を持っているはずだけど。」


優香は少し微笑んで答えた。「桜田製作所の技術力と信頼性の高さが評価されたからです。彼らは高精度の鍛造技術を持ち、チタン合金の遊星歯車の製造にも成功しています。その技術が豊橋モータースにとって非常に魅力的だったのです。」


香織は深く頷き、メモを閉じた。「ありがとう、優香ちゃん。桜田製作所の技術が自動運転車の未来にどれだけ重要か、よく理解できたわ。」


優香は少し照れたように微笑み、「お役に立てて良かったです、香織さん。でも、これからが本当の勝負です。新しい技術を成功させるために、私たちも全力を尽くします。」


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その夜、香織は桜田製作所に戻り、一郎に今日の会話内容を伝えた。彼の顔には少し疲れが見えたが、香織の話に真剣に耳を傾けた。


「新しい技術を導入することで、工場が未来に向けて一歩進むことができるかもしれない」と香織が言った。


「俺たちも全力を尽くしてサポートします。一郎さん、このプロジェクトを一緒に成功させましょう」と涼介も決意を新たにした。


一郎は深く頷き、感謝の言葉を述べた。「君たちの協力に感謝する。桜田製作所の未来は、君たちの手にかかっている。」


香織と涼介は、桜田製作所の新たな未来に向けて、決意を新たにするのだった。

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