第19話 海へ
「おーし、お前ら忘れ物はないな?」
「うん!だいじょうぶ!」
「あんたら、遠足に行くんじゃないのよ?」
現在、俺たちは結界の端まで来てこんなやりとりをしている。
ちなみにゴレさんは本人の意向でここに留守番である。
「まあまあ、今から行くところはここにいる動物より弱いんだろ?
海もあるらしいしぶっちゃけ遠足気分なんだよな。」
「うみ?ってすっぱいんでしょ?早く飲んでみたい!」
「それにめちゃくちゃ広いからな。
見たら感動するかも。」
俺たちが遠足気分で海について話しているとベリルが不審者を見る目でこっちを見ている。
「………これから行くのは一応世界有数の危険地域なんだからしっかりしてよ。
ここで死んだら意味ないんだから。」
「わかってるよ、この森が危ないってことは。
こっちはドラゴンに遭遇してるんだ。」
「まあ…それならいいけど…。」
なんかまた不審者を見る目で見られたが気にしないでおこう。
「そんじゃあ、行くか。」
「おー!」
そうして俺たちは結界の外に出る。
もう何回か結界外に出たことはあるが、この空気が変わる感じには一生慣れそうにない。
「それで、ここから北北東に歩いていけばいいんだよな?」
「うん、そうよ。
結構距離あるから早く行こう。」
そうして俺たちは北北東にある目的地に向けて歩き出した。
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「ウインドカッター!」
周りに動物(美味しいやつ)の気配がしたのかルナが魔法を放ち、それはしっかり命中する。
俺は魔法の当たった動物を〈アイテムボックス〉に入れるためそっちに向かう。
ちなみに今回で5匹目だ。
「……なんか、私の思ってる世界樹の森探索と違う。
危険な動植物と会わないし、なんかおかしくない?」
思ったより安心安全の旅になってるせいかベリルが不思議そうにしている。
「ルナは鼻でどこになにがあるか大体わかるからな。
そこを避けて進めばこんなもんだろ。
そのためにルナが1番前で歩いてるわけだし。」
「そうだったんだ、私はてっきり遠足気分でそうしてるのかと思った。」
「そんなわけないだろ。」
「みのる、これしまって早く先に行こうよ。」
…たしかに安心安全の旅にしてくれてるのは感謝してるけど、今みたいにおいしい動物を見つけたらそいつら全員に攻撃するのはやめてほしいな。
もう数ヶ月分の肉は確保できたわけだし、もういらんだろ。
ただ、俺はそれを口にはせず、倒れている鹿を〈アイテムボックス〉にしまって再び歩き出した。
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それからもルナが動物を狩ることはあったが、それ以外は特に何もなく進んでいった。
気がつくと空が夕焼けになっていたので、俺たちは適当な場所でキャンプの準備を始めた。
と言ってもゴレさんからもらった布を使って作ったテントを張って、机や椅子を出して、料理をするための焚き火を作るだけの簡単なものだ。
「にしても、ここまで何もない1日になるなんて。」
「いいじゃねーか安全安心な旅で。」
ベリルは不満そうにしていたが、俺は気にせずに今日の夕飯を作る。
「みのる!わたしはお肉食べたい!」
「ん、じゃあ今日はステーキにするか。」
「うん!あっ…わたしきょう狩った動物解体しておくね。」
「暇だし、私も手伝うよ。」
「ああ、よろしく。」
俺は食材を〈アイテムボックス〉から出し、料理を作る。
ルナとベリルは解体で時間かかりそうだし、少し時間かけてみるか。
俺はまず鹿肉のロースとモモだと思われる部位をステーキのような形に切って塩とコショウを振って置いておき、調味料ようのにんにく(〈農業〉スキルで出発前に育てたもの)を切っておく。
ちなみに塩はベリルが持っていたものをうば……じゃなくて借りたものだ。
塩は手に入れる手段なかったし正直めちゃくちゃ嬉しかったな。
……………
今回の目的地、海だけど塩作れるんかな。
…いや、今はとりあえず料理だ。
そうなことを考えながら俺は大きな鍋を出して、その中に〈水魔法〉を使って水を入れる。
今日、森を歩いているときに思い出したのだが、動物の骨とかで出汁が取れたはずだ。
……めっちゃ時間かかるけど。
まあ時間はあるし、水の入った鍋に鹿の骨をぶっ込んで火にかけておく。
………料理は任せろみたいな雰囲気を出していたけどやることがなくなってしまった。
いつでも出せるように野菜を切ったり煮たりしてサラダを作って〈アイテムボックス〉に保存するという半ば暇つぶしに近いことをしていると、ルナとベリルの解体がもうちょっとで終わりそうなので最終工程に入る。
鹿の骨のスープを味見して……まだだなと思ったのでこっちは放置。
フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れて炒める。
そしてステーキをドーン。
鹿肉はしっかり焼かなきゃいけないのでそれなりに時間をかける。
…………………………
うーん…中も赤くないしこんな感じでいいか。
俺は皿にステーキを盛り付けて机に置く。
そしてスープの味見をすると、まあ納得できる程度にはなっていたので注ぐ。
そうして夕飯の準備が終わるとちょうど2人は解体が終わったようでこっちにきた。
「おお、美味しそうじゃん。」
「おなか減った…もう食べていい?」
「おう!いいぞ。」
「それじゃあ…「「いただきm『グルゥグルゥグル』」」」
俺たちがご飯を食べようとすると後ろから唸り声のようなもの聞こえた。
後ろを見るとなんかクマがいた。
料理に釣られたのかな?なんて思っているとクマに料理を取られると思ったのかルナが魔法を放つ。
「これは!わたしのゴハン!」
ルナがそう叫ぶとクマに向かって氷の魔法を放ち、クマを覆うように氷が現れ氷漬けにされ、クマが動けなくなった。
「あーあ…かわいそうに。」
俺は動けなくなったクマを横目にご飯を食べ始めたルナを見ながらつぶやく。
「私がトドメ刺してこようか?」
「いや、俺が行くわ。
どうせ〈アイテムボックス〉に入れるわけだし。」
「あっそう、じゃあご飯食べさせてもらうわ。」
そうして俺はのんびりご飯を食べているルナとベリルを残して、氷漬けにされたクマのところに歩いて行く。
必死に動こうとしているが、相当ギッチギチにされたのか、全く動けていない。
「すまんな。……〈かぶとわり〉。」
俺は〈アイテムボックス〉からあらかじめ作っておいた木の板を出して、それを切るように〈斧〉の攻撃スキル〈かぶとわり〉を使うことで〈特攻バグ〉を発動させ、そこそこの魔力と引き換えにクマの首を両断する。
ちなみに〈特攻バグ〉と言うのは、〈斧〉の攻撃スキルを使っているとき木を切ると〈特攻斬〉の効果が攻撃スキルが終わるまで相応の魔力を払うことで対象関係なく発動するバグのこと。
まあ簡単に言えば、『何かに攻撃する前に木を斬ったら攻撃力上がるよ〜 その代わりいっぱい魔力もらうけどね。』みたいな感じだ。
…にしてもこのクマほんとにご飯に釣られてきたのか?
俺たちが勝手に縄張りに入って怒って出てきたならちょっと…いや、かなり申し訳なくなる。
……………
まあ、そんなこと俺にはわからないし、俺はルナとベリルのところに戻って、ご飯を食べ始めた。
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作者 クマさん何も成せなかった。
女神 まあ、ルーナリアちゃんに氷付けにされたらどうしようもないでしょうけどね。
作者 幼女に氷漬けにされるって死んでも死に切れないだろうな。
女神 クマさん復活フラグ?
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