ライク ア ラブソング

長谷川 千秋

金魚

思い出したかのように鳴るスマホの音が夜の静寂を破り、どくりと胸が鳴る。


イメージする彼はそこに私なんていないみたいに窓の外を見ている。

繊細なシルバーのピアスが髪の間から見え隠れする。煙草を片手に深い溜め息をつく。

彼が燻らす薄紫の煙は壁を伝い天井に昇り私を窒息させる。


7月はすっかり夏だ。

日の落ちた後でさえ容赦無い暑さで息苦しい。

夜が深まるにつれて街の明かりが減っていく。

生ぬるい温度の部屋で、エアコンのファンが乾いた音を立てている。


こんな夜は胸がざわざわする。

海の底に沈み込む感覚。

触れた端から空気が纏わりつきゲル化していく。

夜をかき分け酸素を求めて今日も私は生きている。

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