#18
翌朝、私たちは再び王城を訪れた。今度は昨日とは違う部屋で王様と対面している。
「お主たちの協力のおかげで、国の危機が去った。礼を言う」
「いえ、そんな……」
「これで、我が王国も安泰だ」
報告の時にもこんなやり取りをしたが、その時よりさらに格調ばった雰囲気を感じる。緊張感があるし、なんなら私たちの後ろにいるエレノアはがっつり緊張しているようだ。
「そなたら二人と、同行したエレノア嬢に褒美をとらせねばなと思ってな」
「わ、わたくしにはその……父の判断に従います」
エレノアが緊張した声色で伝える。エレノアの性格からして辞退してしまいそうだったけど、咄嗟に家族のことを想えるんだからすごいなぁ。
「うむ、ウェザルクス領の拡大を考えている。だが、お主自身もなにか求めてくれて構わんがな」
「い、いえ……そんな身に余る光栄です」
王様の視線が私と雨月に向く。
「そなたらはどうしたい?」
「私は……そうですね。雨月は?」
「また、こっちの世界に来たい」
こっちの世界に来るのもそうだし、エレノアを地球に案内した気持ちもある。本来、二つの世界が交わるのはどうなのか知らないけれど、もし定期的に行き来ができるのなら地球の食材や調味料で異世界の食材を調理したい。
「そなたらは王家の血筋に連なる者だ。いくらでも歓迎しよう。なればこそ、他に願いはないか?」
来てもいいんだ。じゃあ……私たちの答えは一つかな。
「私の世界の料理を教えたいです。雨月と一緒に」
「私からもお願いします。あちらの世界で培われた知識と、晴日の料理の腕があれば、もっと美味しいものを作り出せると思うんです」
「うむ、そうか! それは我々にとっても喜ばしいな。昨日のタツタアゲなるものも大変に美味だったからな」
王様も満足げに笑っている。
「ではそなたらには爵位を授けよう。詳細は内政官とつめるからすぐさまとは言えないが、エレノアには二人の補佐をさせよう。双方の世界の行き来には彼女ほどの魔術師が必要だからな」
「い、いえ、私たちもむこうの世界に戻った後、次にこちらに来るのがいつかは分からないですから」
「そうか。だが、いずれはこちらに来てもらいたいものだな」
「「はい!」」
私と雨月が揃って返事をする。
「エレノアもそれでよいのか?」
「えぇ、わたくしも二人と共にいられるなら嬉しいです!」
エレノアも乗り気なようで、今回の報奨についての話は終わった。
こちらの世界でやるべきことは一旦すべて終わった。つまり、地球に戻る時が来たということだ。
「ふぅ、なんだかあっという間だったね」
「うん……でも、また会えるから楽しみ」
「また、いつでも来てください。連絡手段はハルヒとウヅキの家に置いた水晶がありますから」
そういえばそうだった。自分であっという間とか言ったくせに、ちょっと忘れていた。
三人でお城の一室に入る。こっちの世界に来た時に最初に降り立った部屋だ。あの時は気にしていなかったけど、大き目な魔法陣が描かれている。
「そうだ、これはウヅキに言ったほうがいいかしら」
そう言ってエレノアが雨月を手招きする。小声で何かを伝えるエレノア、なんの話だろう。戻ってきた雨月はやたらにこやかだ。まぁ、雨月のにこやかは私くらいじゃないと分からないくらいだけど。
「じゃあ、また会いましょう」
「「ありがとう~!!」」
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