#14

 食後、あてがわれた客間に戻る。ふかふかのカーペットと大きなベッド、昨日ははしゃいでダイブしちゃったけど今日はそうもいかない。だって、ここにあるベッドは一台、これで雨月と一緒に寝る。……実家だと布団を並べてだけど、なんかむしょうに緊張する。それに……。


「晴日、その服似合ってるよ」


 昨日の夜はジャージで寝たけど、そのジャージで今日大立ち回りしたわけで、今夜はエレノアからもらった夜着を着ている。形は同じだけど私が薄ピンクで雨月が薄い水色、胸元は開いてるし丈は短いし全体的に透けてるし……お互いの裸なんて当たり前のように見ていたのに、なんだか恥ずかしい。


「あ、ありがと……」


 そそくさと雨月の横を通り過ぎて、私は窓際に置かれた椅子に腰かけた。


「どうしたの? 具合でも悪い?」

「ううん、平気だよ。ちょっと疲れてるだけだから」


 雨月は心配してくれたみたいだけど、私は笑顔で返した。


「ならいいんだけど……本当に大丈夫?」

「大丈夫だって。なんでそんなに念押しするのさ?」


 雨月のこと、なんでも分かっているつもりだったけれど……こっちの世界に来てから、少しずつ分からないことが増えた気がする。あのキスも、その真意も。


「……じゃあ、キスも、その続きも、いい……よね?」


 私の肩に手を置きながら、雨月は顔を近づけてくる。同じ顔でも違う表情。雨月の瞳に私が映って、私の瞳に雨月が映る。


「えっ!?」


 突然のことに戸惑っているうちに唇が重なる。何度も、何度も。


「ん……ふぅ……ちゅく……んぁ……」


 頭がくらくらしてくるような濃厚なキス。舌が絡まって、唾液が混ざりあって、息が苦しくなる。それでも、もっとしてほしいと思えた。


「ぷはぁ! はぁ、はぁ……もう、いきなり何なの?」


 やっと解放されて呼吸を整える。


「ごめん、我慢できなくて」


 雨月はそう言って笑った。

 ―――雨月はずるい。私と同じ顔のくせに、私より可愛く見える。それなのに、こんなにドキドキさせられるなんて反則だ。


「ねぇ、晴日」

「なに?」

「……好きだよ」

「……!」


それは、いつもと変わらない言葉だったはずなのに、なぜかすごく特別なものに聞こえた。


「大好き」


もう一度呟いて、今度は首筋を舐められる。


「ひゃあっ!……やめてよ、そういうのはだめだから」

「どうして?」

「どうしても何も……私たちは双子だし、女の子同士だし……」

「関係ないよ」

「あるよ」


雨月から逃げるように、背中を向ける。


「……晴日」


後ろから抱き締められた。


「……好き」


耳元で囁かれる声に背筋がぞくっとする。


「……雨月」

「……晴日」


 振り向いた瞬間、再び口づけされる。身体が熱を帯びる。一つに融けてしまいそうで……でも、私と雨月は少しずつ違う。

 雨月の方が少しだけ色白で、少しだけ胸も大きくて、少しだけ手が荒れている。私が一人で出かけてしまった時も、家の手伝いをしていた雨月の手だ。


「私も、雨月のこと……大好きだよ」


 雨月の手を握り受け入れる。私からする初めてのキス。


「明かりは……消してね」


 双子で……姉妹で……最愛。

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