第2話 1stダンジョン Ⅰ

「えっ」


 ボディコンソールに表示された同接数は38人。

 なにかの間違いじゃないよね?


(おかしいな。紫月しづきしか見てないのに)


 ダンジョン配信をはじめて2ヶ月。

 僕の配信の同接数はひとりがデフォルトだ。


 妹が唯一の視聴者。


(そのはずなんだけど)


 こんなに大勢の人に見られた経験は一度もない。

 とりあえずなんか言わなきゃ。


「皆さん。こんにちやっほー。閃光の最終旋律エデンです」


 おそるおそる口にしてみると。


:は?

:出オチやん

:エデンww

:エデンとなww

:閃光の最終旋律www

:吹いたw

:名前痛すぎw

:厨二やな

:こんにちやっほーww

:挨拶が不自然

:いきなり情報量多くて草


 おぉ、コメントついた!

 なんか嬉しい。


(っと)


 がしゃん。


 思わず手を滑らせてボディコンソールを地面に落としてしまう。


:落ち着きないw

:配信主大丈夫そ?

:こんな奴がワデアの彼氏とかw

:名前くらいちゃんと付けた方がいいぞ

:おいおいw


「すみません。大勢の方の前で配信するのはこれがはじめてで。ちょっと緊張してます」


:素直でよろしい

:真面目かw

:気にすんな

:なんかコミュ障っぽい

:オラわくわくしてきたぞ


「それと僕の配信を見に来てくれてありがとうございます。本日は最後までどうぞよろしくお願いします」


 ぺこりと頭を下げる。


:礼儀正しいのなw

:ええやん

:ふぁいてぃん!

:ちょっと楽しみ

:人良さそうw


 好意的なコメントも貰えてる。

 とてもありがたい。


 リスナーさんとこんな風にやり取りするのは本当にはじめての経験。

 まだ少し緊張してるけど・・・うん。


 この先も楽しんで配信できそうだ。


(ひとまず青魔法陣を探そう)


 今は地下1階のスタート地点。

 目標はいつもと同じく最下層へ到達すること。


「あとごめんなさい。ボディコンは一旦しまっちゃうので、しばらくコメントに反応できなくなります」


:おけ

:ええで

:了解ー

:いやしまうなよw

:初心者ムーブww

:気をつけて進んでくれ


 一度お辞儀すると、ボディコンソールを亜空間に収納する。

 これで準備万全。


「それじゃ先へ進んでいきますね」




 ◇◇◇




 さっそく洞窟タイプの通路を歩きはじめる。


(まずは突き当りを右かな)


 手持ちの遺物キューブはゼロ。

 当然、マップを確認できるようなものは持ってない。


 だから最初はだいたいが勘だ。

 

:つかなんでFPVカメラなんて使ってるん?

:配信主の姿見えないね

:メガネカメラ使ってるのか

:この視点酔う・・・

:グラグラしすぎww


(おっ)


 しばらく歩くと、先の通路に青魔法陣を見つける。


 今日は運がいいみたいだ。

 いつもよりかなり早い。


 ヴゥーーン!


 青魔法陣を踏むと僕は地下2階へ降りた。


:はやw

:エネミーと遭遇しなかったな

:B1で周回しない感じ?

:珍しいな

:いいじゃん


 よし、順調だ。

 このままどんどん進んでいこう。

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