2章

第15話 学校 その1


 窓の外は曇り空。

 午後からは雨が降るみたい。


 季節は6月中旬。


 梅雨の時期だからまあ仕方ない。

 

 けど。

 そんなことまったく関係ないみたいに教室は賑やかだ。

 

 スマホで動画見て盛り上がってたり。

 SNSにアップするのかな一緒に撮影してたり。

 

 ゲームしてたり、踊ってたり、だべりながらお弁当食べてたり。


 昼休みだもんね。

 みんな友達とわいわいして楽しそう。


 んで、僕はというと。 


(あいかわらず凝ってるよな。紫月しづきのお弁当)


 牛肉のカルパッチョとエビの春巻き、ピリ辛茄子。

 マグロの竜田揚げ、ナポリタンにミニトマト。

 

 贅沢な食材が所狭しと入れられてる。


 いつものことだけど、学校の昼休みに食べるお弁当のクオリティじゃないよなぁ。


(いただきます)


 いつもように手を合わせてからひとりで食べはじめる。


 もぐもぐ。

 

 うん。

 今日も紫月のお弁当は最高に美味い。

 

(帰ったらちゃんとお礼を言わないとね)




 もぐもぐ・・・。


 食べながら、ふとまわりの様子が目に入る。


(ひとりで食事してるのはやっぱり僕だけか)


 もちろんいつもひとりってわけじゃない。

 話ができるクラスメイトは教室に何人かいるし。


 ただ、いつメンがいないだけ。


 でも。

 正直言ってそこまで気にならない。

 

(今の僕にはやらなきゃいけないことがあるから)

 

 ダンジョン配信。

 

 まだはじめて2ヶ月とちょっとだけど。

 それでも放課後の日課になりつつある。


 ダンジョン配信は、帰宅後すぐにやるって決めてて。


 ぜんぶ紫月のためだ。


 紫月は昔から体が弱くて。

 夕方から夜の間しか起きてることができない。


 このお弁当も実は昨日の夜に作ってもらった。

 

 中学校には在籍してるんだけど、ほとんど通えてなかったりする。


 だから、少しでも学生気分を味わいたいってことで。

 家では中学の制服を着てたりして。


 そんな中で。

 紫月は毎日僕のためにお弁当を作ってくれてるんだ。


(ほんと感謝だよね)


 ごちそうさまでした。


 手を合わせると弁当箱をカバンにしまう。


 さてと。

 今日もやることをやっておこうかな。


 スマホを取り出すと、Teentubeのアプリをタップして自分のチャンネルへ。

 

 ダンジョン配信のアーカイブを見て振り返ること。

 これも日課のひとつだ。


(ん? なんかコメントがついてる?)


 普段、動画にコメントが書かれることなんてほとんどないんだけど。

 珍しい。


 そこにはひとつだけ。


:ワデアの男ってこいつ?


 そんなコメントがついてた。

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