第6話 食事と殺人は愉快?

娘?「その...私に魔法を教えてくれないでしょうか!」


急にそんなことを言われた。


目の前の娘はおそらく羊族。角が特徴的で白い髪に短いショートヘアの可愛げのある子だった。


爺「なぜ私が?」


娘?「貴方様がとてもお強そうなお方に見えたので」


爺「ほう?」


随分と見る目があるじゃなかい。あっそうだ。魔力を全然隠してなかったわ。そりゃバレるわ。


他の強者たちなら強さを明かして一気にボコボコにしたりなどと言った展開にするだろう。


しかし今の私は暗躍者。ここはすかさず


爺「それは私の後ろ人からの力じゃないですか?」


先ほどまでいたラツカのところを指差す。


爺「っと誰もいない。けどさっきまでラツカさんがいたからそのせいでしょう」


娘?「ええ、そうですか?でも確かに今は強さが感じれないわねえ」


爺「こんなしがない爺に構っていないで王都にでも行って魔法を極めてきなさい」


娘?「それができたら苦労はしませんよ...」


なんだか訳ありだか面倒そうだし関わらないほうがいいな。


爺「まあおやすみ」


娘?「いやいやそこは話を聞こうとかしてくださいよ。ま、お爺さんにそんな細かいことを求めてもしょうがないっと言えばしょうがないんですけど」


こいつ随分と失礼なやつだな。


爺「...」


私は無言で部屋に戻った。


ベットで横になり今日のことを振り返った。


ブラックタイガーに会い奇妙な行動を見て、なんだかめちゃ強そうな人と会って...うーん、もう濃厚だ、これ。


私は仕事から解放されたが故か特に何も気にせずに寝れた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



爺「ふわぁぁぁぁあ」


まだ眠い。二度寝。


爺「ふわぁぁぁぁあ」


まだ眠い。三度寝。


爺「ふわぁぁぁぁあ」


流石に起きるか。今何時だ?


アイテムボックスを漁りながら時計を取り出す。


しかし


爺「なんだこのオンボロ」


昨日五人組から奪い...遺品を回...いやそれもよくないな。物が落ちていたから拾ったものだった。


しかしこの時計外の明るさを時計に表すだけという洞窟で使うから使わないかぐらいのオンボロ安物だった。


爺「まったく、ゴミから出る物はゴミということか」


私は本物の時計を見て時間を確認して十一時半だった。この昼近くまで寝ると言う至福。たまらんなぁ。


そんなことを思いながら下に降りると昨日の娘がいた。


娘?「随分と寝るんですね」


爺「年寄りだからね〜」


娘?「むしろ年寄りは早起きのイメージがありますけど。それに寝過ぎるのってなんか気持ち悪くなりません?」


爺「やめろ、本当のことを言うな」


事実をただただ言われるのって辛いわ。


娘?「とりあえずお爺さん朝食でしょ?私も昼食を食べたいから連れてって」


昨日の可愛げはどこへやら。ふてぶてしさが残った。


爺「別にいいけど、昨日の今日で随分と図々しい奴だな」


娘?「私の勘なら貴方お金持ちだし奢ってくれそうと思ったのよ」


爺「ふざけた勘だな」


当たっているのが意味不明だが。


爺「おすすめはどこだ」


娘?「おすすめ?それならフェンルに行かない?」


爺「私は昨日来たばかりだから何のお店か知らないけど美味しいならそこに行く」


娘?「じゃあそこで!」


そうして二人でフェンルというお店に行った。



ーーーーーーーーーー



娘?「でさあ最近私ってどんどん可愛くなってるのよ。だから角に勝手に触る客が増えて本当に困るのよね」


爺「こんなやつに興味あるとは物好きがいたもんだ」


娘?「お爺さん随分失礼よね。貴方が変なだけよ。というか貴方って魔族よね?それでお爺さんのような風貌って何歳よ」


これは変装姿だからなあ。


爺「知るか。途中で考えるのをやめた」


娘?「歳取ると感じたくないのかしらね」


爺「お前にもいつかその時は来るさ。歳を取るともはや考えるのをやめたくなる時期がな」


娘?「...生々しいわね」


そんなことを思っているとお店に着いた。


爺「随分と高そうなお店だな」


娘?「流石に図々しい?」


爺「別にいいよ。これもまあ旅の醍醐味だ」


娘?「やったー!」


店に入り席に案内されててきとうきおすすめを注文した。なんかブラッディホーンブルというほぼ牛の魔物の見た目の中を注文した。


そういえば魔王城で働いていたころは飯は全部秘書にお願いして毎日変わったもん食ってたなあ。


今思うと自分で選んだ方が楽しいな。


娘?「なんかすごいオシャレですね」


爺「そうだなぁ。ま、特に気にせんでええだろ」


娘?「そうですか...」


マ「おや、カルゼルさん」


声をかけられたために後ろを振り返るとマルタタがいた。


爺「おっまた食事処で会うなんて」


マ「ですね、おや旅人と聞いていましたが、そちらの方はお孫さんですか?」


爺「いや、こいつは宿の...あれ?名前なんだ?」


娘?「そういや名前名乗ってなかったわ。私はムイよ」


マ「名前も知らない人と一緒に食事とは...」


呆れたような目で見られた。


爺「いやまあ、食事を楽しめれば名前なんてどうでもいいと思ってだな。あっムイ。私はカルゼルだ」


ム「へー、どうでもいいわ」


酷い。


マ「そうですか、宿の娘さんですか...」


なんか考えているマルタタ。


爺「で、なんか面白い話でもあるのか?」


マ「いえいえ、たまたま見たので。それでは」


そうしてマルタタはどっかに行った。 


ム「なんだったんだろうね」


爺「さあ?」


従業員「お待たせいたしました」


なんか時間が経っていたのかすぐに提供されるのかわからないけど届いた。


従「こちらブラッディホーンブルのステーキでございます」


あっステーキだったのね。じゃあ少なくともハズレはないだろ。


従「それでは」


爺「こりゃ美味そうだ」


ム「私、こんなの初めてみた」


爺「ではさっそく」


いただきます。


口のなかにステーキを入れる。かみごたえがあり、噛めば噛むほど肉汁がジュワッと出てくる。うっほほ。やば。


ムイを見るとめちゃくちゃ幸せそうな顔をして食べていた。ただの宿娘に奢るのも変な話だが幸せそうならいいかもな。


そうしてどんどんと肉とパンを食べて平らげた。


爺、ム「「美味かった〜」」


食事を終えて会計をした。


従「お会計は1万3000ゴールドでございます」


爺「はい、これ」


従「ありがとうございました」


ム「いやー本当に美味しい料理を食べさしてもらってありがとうね」


爺「いやいや全然ただでいいんだよ。ただ」


ム「ただ?」


爺「ちょっと付き合ってもらってもいいかな?」


ム「えっと...健全?」


爺「わしをなんだと思ってるんだ。やめろ。そんな発想になるな」


ム「まあそれならいいけど」


私はムイに下町の見通しの悪いところに少し立ってろと指示をして別れた。



ーーーーーーーーーー



私は遠いところからムイを見ていた。おそらくあいつがくるはずだ。


私は爺さんの姿から元の魔王の姿に戻った。


暗躍といえばやっぱりこのクールな姿の魔王様っしょ!


そして少し遠くから見ていたところ、そいつはやってきた。


?「...」


そいつはフードを被っていて顔がよく見えなかったがニヤリと笑っていた。間違いなくムイを狙ってる。


魔王「では始めようか」


私はすぐさまにそいつの近くに駆け寄った。


そいつはムイを襲おうと構えをしていたが、こちらの気配に気づいたのかすぐさま離れた。


魔「待て待てスキル発動!迎えろ、風の魔王!」


すると風がそいつのところからこちらの前までに暴風が吹いた。


ム「きゃー!なに?」


ムイは風がすごいのかどこかへ逃げてしまった。めっちゃありがたい。


そいつは向かい風に耐えれないからなのか、その風を利用してすぐさまこちらに刃を向けて


?「スキル発動!炎の腕!炎の腕フレームアーム」


両脇に腕の形をした炎が現れて私のことを叩こうとした。


しかし私は素早く後ろに沿って避けて。


魔「スキル発動!早斬撃!」


足から風魔法を出して高速で飛ばすことによって斬撃もどきを相手に向かって打った。


するとそいつのフードが破けた。


マ「ぐぬぬ」


目の前にはマルタタが現れた。


マ「なぜ魔王がここにいるんだ、死んだんじゃなかったのか?」


魔「なぜだろうな」


マ「スキ...」


魔「遅い!スキル発動!アイスブロック!」


マルタタに一気に近づいて足と手を氷漬けにした。


マ「なんなんだこれは!」


魔「さあて色々と聞きたいことが...あったらいいんだがなあ」


マ「なんだと?」


魔「だってもう黒幕とか君が何をしているとかもう知っているし」


マ「!」


魔「しかしつまらんなあ」


マ「だったら早く警備兵に連れていけ」


マルタタは諦めたかのようにそう言う。


魔「何を言ってるんだ?連れていくわけないだろ」


マ「だったらどうするんだ?」


魔「もちろん殺すに決まってるだろ。お前動きとか行動的に暗殺者なんだろ?ちょっと興奮するんだよ。暗殺者が殺されるのってどんな気分なんだろうかって」


マ「はあ!?」


魔「なあ、どんな気持ちなんだ、今」


マ「貴様...」


魔「はっはっはっ!最高に愉快!」


マ「スキル発動!炎の腕!」炎の腕フレームアーム」


マルタタは氷を溶かそうとする。しかし溶けない。


マ「は!?なんだこれは」


魔「助かると思ったのかい?どうだい、溶けない氷は?どうだい、逃げれると思っていたのに逃げれない気持ちは?どうなんだい?ねえ、ねえ!」


マ「こいつ...本当にやべえ」


私は手を伸ばしてパーからグーにして氷を破壊した。


マ「な!?」


魔「糸目なのにこんなにも暴れるなんて...勿体なさすぎる」


マ「何を言ってるか知らんがスキル発動!雷の妖精よ!やつを焼き殺せ!」


とんでもない量の魔力を使って私を殺そうとしにくる。


しかし私は後ろに回り込んで、


魔「ただのパンチ!」


マ「ぐへっ」


後ろから殴られて前に倒れる。


マ「なぜ雷の速さに追いつくんだ」


魔「さあてお前結構いい物持ってるし身ぐるみ全部置いてけ?そして昨日買った商品のお金も全部貰ってやるよ」


マ「見ぐるみ?とちうか昨日買ったってまさか」


魔「きっしっしっ。その皮も私がありがたく今後の暗躍人生に使わせてもらうよ。有効活用だ。喜べ」


マ「死ね!スキ」


スキルを発動する前に私は剣でマルタタの首を跳ねた。


そして私は真面目な顔と声で


魔「君に殺されたり愉快されたりした事たちを合わせると君の罪は死だけでは消えないだろう。しかし生きている限り他の子たちは悔いが残り憎み続ける」


私は空を見て、

魔「安らかに眠ってくれ。仇はとった」


私は目を閉じてしばし何も考えなかった。

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